「改めてチェックするという言い方は難だけど、瀬戸内(広島県代表)の山岡泰輔クン(3年=右投左打)は見ておく必要がある。地元では好投手として名を馳せていたようだが、これまでは大きな大会に縁のなかった投手だからね。県予選決勝戦と同再試合で17回3分の1を投げたスタミナはもちろんだが、昨秋から今夏にかけ、著しく成長している。こんなに良い投手になっていたとは…」(在阪球団スカウト)
高野連にお叱りを受けるかもしれないが、夏の甲子園大会は、プロ野球スカウトにとって、“金の卵たちを見定めるショーケース”でもある。また、今夏は「3年生よりも2年生が面白い」(在京球団スカウト)との声も多く聞かれた。たしかに、今大会は屈指の好右腕・安楽智大(済美)を始め、木更津総合・千葉貴央、横浜・伊藤将司、日本分理・飯塚悟史、前橋育成・高橋光成、大垣日大・高田航生、星稜・岩下大輝など、『背番号1』を付けた2年生も多い。
「大阪桐蔭の森友哉、聖光学院・園部聡、仙台育英・上林誠知といった3年生のドラフト候補たちについては、今夏の勝敗、個人成績がどうであろうと評価は変わらないと思います」(前出・在阪スカウト)
「2年生が面白い」の言葉は、来年のドラフトに備えたデータ集めという意味も含まれているようだ。さらに続けて、同スカウトはこう言う。
「今夏は地方予選で消えてしまった学校のなかに『逸材』が少なくないんですよ。桐光学園の松井(裕樹)クンのように」
近年、甲子園入りするスカウトの表情も変わったような気がする。
「特定の球団以外の指名なら進学する」という高校球児はゼロではないが、もうほとんど見掛けなくなった。「メジャー挑戦」志望は厄介だが、大多数の球児は「指名された球団で頑張ればいい」と考えている。そのせいか、スカウトたちも、他球団を出し抜くような隠しダマを探すのではなく、有名球児を正しく評価しようとしているようだ。
各スカウトには全国規模の大会に縁のなかった3年生球児を再確認する目的こそあれ、他球団関係者と談笑する姿を見掛けるのもそのせいだろうか。(一部敬称略/スポーツライター・飯山満)