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センバツ情報 第85回記念大会に見える東北の底力

 3月15日、第85回記念選抜高校野球大会の組み合わせ抽選会が行われた(27日開幕)。敦賀気比VS沖縄尚学、浦和学院VS土佐、済美VS広陵、済々黌VS常総学院、オールドファンも喜びそうな龍谷大平安VS早稲田実など好カードも多いが、抽選会場がもっとも盛り上がったのは、『遠軽VSいわき海星』の一戦が決まったときだった。
 史上初の21世紀枠同士の顔合わせとなる。『21世紀枠』についてはいまだ批判的な声もあるだけに、その意義が問われる一戦となるだろう。そこで改めて、今大会の21世紀枠4校が決定するまでの経緯を追ってみた。
 まず、85回目の節目、記念大会として『21世紀枠』を1校増やし、計4校とすることが発表されたのは、昨年7月4日。選出基準は「未定」とのことだった。

 「記念大会の特別枠なのだから、東北地区の高校が優先的されるのではないか」
 現場で指導する高校野球関係者も、そんな予想をしていた。
 ヤッカミではない。甚大な被害をこうむった東日本大震災以降、甲子園大会も被災地を支援し、球児たちの健闘をもって日本中を勇気づけることをテーマとしてきたからであり、現場指導者も高校野球の影響力を再確認していた。
 「東北地区の連合チームが選ばれる可能性だってある」
 仮にその「プラス1」が東北に優遇されたとしても、むしろ応援したいという雰囲気さえ漂っていた。

 ところが、昨年11月の神宮大会で事態が一変した。
 仙台育英(宮城県)が初優勝を飾った。同大会、各地区秋季大会の成績が出場校選抜に大きく影響することは説明するまでもないだろう。神宮大会優勝校は自動的にセンバツ出場となる傾向もあり、東北地区の仙台育英が実力で“神宮枠”を勝ち取った時点で、一般選考枠は、「通年の3校プラス1」に。東北優遇が規制路線のように捉えられていた21世紀枠(4校)が加わると、「85回大会は東北の高校から、6、7校が選ばれるのではないか?」との声も聞かれるようになった。

 85回大会の出場校は36校。うち6、7校が東北地区の高校が選ばれれば、被災地応援の名目があっても、バランスが悪い…。一変して、「21世紀枠は東北地区に割り当てられないのではないか?」との懸念まで囁かれた。

 今大会で東北地区から選出された高校は、一般枠で仙台育英、聖光学院、盛岡大府、山形中央。21世紀枠からはいわき海星が選ばれた。他の21紀枠選抜校は、北海道地区の遠軽、中国地区の益田翔陽、四国地区の土佐。東北地区からは全部で計5校が選ばれたこととなり、選考委員会は他地区とのバランスも汲みながら、被災地応援の名目も上手に残してくれたのではないだろうか。

 東北地区から5校が選ばれたのは、史上最多である。その5校目となった「21世紀枠選出」のいわき海星は、震災による津波被害を受けたいわき市にある。1月25日に発表された推薦理由だが、<水産高校でもある同校は海洋実習で主力部員4人を欠きながらも、県大会ベスト16まで勝ち上がった>とのことだった。意義ある5校目の選抜となった同校は、奇しくも21世紀枠出場の遠軽とぶつかる。いわき海星の坂本啓真主将は抽選会後の共同会見で「地元の期待」も口にしていた。配布資料によれば、同校の男子部員16人は、全て地元出身だった。21世紀枠出場校の選抜理由の曖昧さ、存在意義も指摘されてきたが、こうした“大人の視点”も吹き飛ばすような好ゲームを見せてもらいたい。
(スポーツライター・美山和也)

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