同校野球部2年の久芳利希さん(17)が2月6日、野球部の練習で打球が目を直撃してケガをしたのは、学校側が安全配慮の義務を怠ったためとして、大越監督、部長、同校に対して、約6000万円の損害賠償を求め、福岡地裁に提訴した。
訴状などによると、11年11月、打撃投手をしていた久芳さんの右目に、近くのネットの鉄枠をかすった打球が直撃。右眼窩底(がんかてい)骨折で、事故後3カ月間入院し、その後も通院治療が1年続いたという。視力は2・0から0・04まで低下。視界がぼやける後遺症が残った。
普段は打者から17メートル離れて投げるが、当日は監督から打者から14メートルまで近づくよう指示があった。久芳さんの前にはL字形の防球ネットがあったが、打球は別のネットの鉄枠に当たって方向が変わり、目に当たったという。
久芳さん側は「監督は危険な練習方法を指示した上、事故を避けるための適切な指導も行わず、安全配慮義務に違反した。通常よりはるかに短い投球距離での打撃練習を、指示するべきではなかった」と主張している。
提訴後に会見した母親の早苗さん(41)は「息子はプロ野球選手になるという夢を閉ざされた。学校が、指導は十分で過失がないと主張するので提訴した」と話した。
同校は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。
同校は昨年春の第84回選抜高校野球大会に初出場。夏の山口県大会ではベスト4、秋季中国地区大会ではベスト8に残った強豪校。
大越監督は92年のドラフト1位で、投手としてダイエーに入団したが、伸び悩んだため、96年に打者転向。99年からは一軍に定着して、主に守備、代走要員として活躍。03年オフに戦力外通告を受け、引退した。生涯成績は365試合に出場して、211打数50安打、打率.237、本塁打1、打点3、盗塁3。投手としては、13試合に登板して0勝0敗だった。
引退後は東亜大学に編入し、教員免許を取得。07年4月に早鞆高に保健体育の教員として着任。日本学生野球協会から高校野球指導者資格を認定され、09年9月に同校の監督に就任。わずか、2年半で甲子園出場を果たした。
大越監督や学校側に過失があるのかどうか、非常に難しい裁判になりそうだ。
(落合一郎)