新制度では教員免許がなくても、NPB(日本野球機構)、日本学生野球協会の座学研修を受け、適正審査をパスすれば、指導者になれる。
プロ側は7月28日、学生側は12月13、14日に1回目の研修があり、この冬には、それぞれ4回の研修を実施。受講者数について、プロ側は1000人を提示、アマ側は100人程度を想定していたが、400人で決着した。
学生側は「来年から本格的な受け入れを始めたい」としており、資格取得者は高校、大学を問わず、学生野球の指導者になれることになる。
すでに、大学の指導者については、「プロ退団後、2年経過」などとして、特例的に緩和されていたが、高校に関しては教員免許を取得した上で、通算2年以上の教諭歴がなければ、元プロが指導者になることができなかった。
この大幅な条件緩和により、教員免許を持たなくてもプロ、アマ双方が義務付ける研修で資格を得れば、学生野球の指導者になることが可能となる。教員ではないものの、すでに特例にて大学で指導をしている元プロの監督も、新たに資格を取ることが必要になった。
これまで、高校で監督になるためには大きなハードルが存在したが、今回の規則改正により、研修を受けて、適正審査に通りさえすれば、誰でも容易に資格が取れることになった。プロの監督経験者や、元スター選手が高校の監督になることも可能だ。
学生側としては、高いレベルの技術を指導してもらえるメリットがあるが、ルール変更は高校野球のあり方をゆがんだものにする危惧もはらんでいる。
元プロが金銭度外視で、純粋に「学生を教えたい」ということなら問題ないが、現実として、元プロにも生活があり、そうもいかないだろう。有名な元プロを監督として、招へいできるのは資金にゆとりがある私立に限られてしまう可能性が高い。元スター選手が監督となれば、有望選手の獲得もしやすくなる。そうなると、選手の才能や質、指導者の技術、両面で私立と公立では大きな“格差”が生じてしまう恐れがある。
数年後、甲子園には私立高校しか出場できないといった事態に陥ってしまいかねず、学生野球本来のあるべき姿から、かけ離れてしまうかもしれない。
(落合一郎)