ネット裏のスコアラーたちがそううなっていた。生え抜きのOB・野村謙二郎氏を監督に迎えたものの、開幕20試合を迎えた時点での成績は、9勝11敗の5位。満を持して登場した『エリート幹部候補生』ではあるが、チームは今一つ活気づいていない。勝ち頭だったルイスの退団、エース・大竹寛の故障離脱、4番・栗原健太の不振などが敗因だが、対戦チームの見方は違う。「野村体制になり、フロントの動きが迅速になった」と“警戒”を強めていた。
「先日、報じられた新外国人投手獲得の一件がそうですよ」(某スコアラー)
広島がドジャースのエリク・スタルツ投手(30)の獲得に向けて動いていたことが判明したのは、3月30日。同投手はド軍もローテーション入りを期待していた“働き盛りの左腕”だ。スタルツ本人はトボケていたが、広島入りを否定していない。ド軍関係者も「正式発表まではコメントできない。広島が何も言っていないのだから」と、暗に移籍を認める言動を見せていた。
「昨年オフの段階で広島がスタルツに興味を示していたのは本当です。交渉が長引き、広島側がいったん手を引いたんですが、3月下旬になって、再びアプローチを掛けてきたんです」(地元メディア陣の1人)
「3月下旬の再アプローチ」。エース・大竹の前半戦復帰が絶望視されたころでもある。
広島にもシーズン途中に外国人選手を補強した実績はある。しかし、開幕2週間弱で緊急補強に動いたのは、初めてかもしれない。ここまで迅速な対応は「野村謙二郎・新監督に恥を掻かせたくない」の一心からだろう。チーム関係者がこう言う。
「昨夏、松田元オーナーが解説者だった野村監督とコンタクトを取り、監督就任を打診しました。野村監督は『コーチ経験がまだない』と辞退しましたが、その後浮上した別のOBの名前を聞くなり、地元経済界が『野村がいい!』と松田オーナーに詰め寄ったんです。野村監督もそんな事情を知り、断れなくなりました」
新球場2年目でも集客力が見込めるのは「野村謙二郎だけ」との考えで一致した地元経済界は、広告出資などの“後方支援”を約束したという。こうした眼に見えない地元の圧力がフロントを動かし、緊急補強に繋がったわけである。例年の広島なら、資金難を理由に若手登用で終わっていたはずだ。
「最初の阪神戦(3月30日〜4月1日)、巨人戦(4月2〜4日)の5試合の観客動員数ですが(2日は雨天中止)、球団は『どうなっているんだ!?』という気持ちだったようです。阪神、巨人の人気カードで3万人に到達した試合は1試合もなかったので。いくら、野村謙二郎氏が監督でも、勝てなければお客は離れていくと認識させられました。この先、チームが低迷したままなら、第2、第3の緊急補強は必至です」(前出・同)
ライバル球団はそんな例年にない広島の迅速な対応にブキミさも感じていた。
ところで、地元経済界にダメ出しされた別の生え抜きOBって、誰!? 前出のチーム関係者は「今もチームで仕事をしているので…」と教えてくれなかったが、二軍選手への熱心な指導には定評があるそうだ。