今後の予定だが、まず、高校野球・センバツ大会前日の『高野連・全国理事会』で、前述の協議会内容が説明される(3月21日)。各都道府県の理事たちが『反対』しなければ、「年内実施」の方向で動き出すという。1961年の『柳川事件』以降、断絶状態にあったプロ・アマ間の長い隔たりを思えば、“歴史的出来事”と言っても過言ではないだろう。
しかし、喜ぶのはまだ早い。合同協議会でプロ、アマの主要出席者が“興味深い発言”をしていた。
「思っていた以上の進展。早く実現できるように研修内容の案を固めていきたい」(NPB・下田邦夫事務局長)
「(今回の条件緩和で)高校の監督にすぐに雇用されるわけではないが、高校野球に恩返ししたいというプロ選手たちの思いも聞いてきた結果」(高野連・西岡宏堂理事)
もともと、2年の教諭実績の撤廃を“お願い”したのは、NPB側である。昨年の定例会合で提案した際、学生側が「代案があるのなら、検討する」と“前向きに”回答。これを受け、NPB側が今回の座学による研修カリキュラムシステムを提案したわけだが、下田局長の「思っていた以上の進展」なるコメントが、駆け足で決まった内情を表している。同局長は記者団から「座学の具体的な内容」について質問された際、「これから作る」と話していた。
つまり、この短期間で高野連がここまで歩み寄ってくるとは思っていなかったのだろう。研修の具体的な中身をまとめるのは、これからということになる。
また、西岡理事の言葉も“意味シン”だ。「高校の監督にすぐに雇用されるわけではないが…」と、前置きしている。
「2年以上の教諭実績」という条件は撤廃するが、実際に指導者として雇用されるか否か、あるいは、『臨時コーチ』だとしても、その要請があるかどうかは、学校経営者次第なのだ。
プロ野球選手、並びに元プロは「高校野球の指導者職」を再就職として捉えていると聞く。ボランティアでも高校生を教えたいと思うプロ野球OBはどれくらいいるだろうか。
昨春時点で、改定前の規定をクリアして高校野球指導者となった元プロ選手は30人(海外、独立を含む/12年春時点)。教員として採用試験を受けた者もいるが、プロ入り前のツテや学生時代の恩師の紹介で赴任先を得たOBもいないわけではない。
どの高校も少子化で学校経営は厳しいという。そういったなかで“部活動指導者”を増やす余裕(人件費)はないと思うのだが…。
こちらが調べた限りでは、赴任先の高校について「学生時代の恩師や地元関係者にお世話になった」と話す元プロの指導者も少なくなかった。
今後、NPBが取り組むべき課題は研修内容だけではない。プロ野球選手会ともスクラムを組み、高校野球指導を目指すOBたちの就職斡旋についても、考えていかなければならないだろう。(スポーツライター・美山和也)