早大大学院生というのも、巨人との疑惑の密約入団で染みついたヒールのイメージ一掃が狙いではと、勘ぐりたくなる。「元パイレーツ」「早大大学院出」という2つの肩書きは、プロ野球界にとって新たな監督誕生を意味するからだ。
「メジャーリーグ経験者で日本プロ野球界の監督はいない。野茂がオリックスの特別コーチをしたり、吉井が日本ハムで投手コーチをしているが、監督はまだ出ていない。日本人メジャーリーガーの第1号監督となればインパクトがあり、注目度は高い。桑田が最短距離にいるのは間違いない」
このメジャーリーグ・ウオッチャーの言葉には説得力がある。「早大大学院出」の監督にも新鮮味がある。これまでの監督は、高校出身、大学出身、社会人出身の3つで、大学院というのはない。実は、桑田の前に早大大学院出として監督の座を狙っていた球界OBはいる。名球会メンバーでもある中日OBの谷沢健一氏だ。
早大出身で中日にドラフト1位で入団。いきなり新人王獲得。首位打者にも2度輝いている。アキレス腱を切断するアクシデントもあったが、それを乗り越えカムバック賞を受賞している。現役引退後は森監督率いる西武で打撃コーチを務め、中日監督候補の1人として常に名前があがっていたが、98年に早大大学院に入学している。
「新たな勉強がしたくなった」と谷沢氏は言うが、周囲では「本人が強く望んでいる中日監督就任への球団に対する新しいアピールではないか」とウワサされた。結局、谷沢氏は万年中日監督候補で、クラブチームの監督などを務めている。桑田氏がプロ野球の監督に就任すれば、早大大学院の大先輩である谷沢氏の志を継ぐ結果にもなるだろう。監督候補の人材不足に泣いているプロ野球界にとって、元日本人メジャーリーガー第1号監督、スポーツビジネスを学んだ異色の大学院出身の監督という、二大看板のある桑田氏は魅力十分。売り手市場になるのは間違いないだろう。登板チャンスを与えてくれない原監督と正面衝突して巨人のユニホームを脱いだのに、最終的に円満退団となったのは、球団側に将来の桑田監督の思惑があったからだ。
「桑田君は将来の幹部候補生です」とフロント首脳は明言している。系列のスポーツ紙に専属評論家として抱えているのは、他球団への流出を歯止めする意味合いがある。実際に桑田氏への熱視線は巨人だけではない。横浜球団の経営に対し熱意がないと球界内外から批判を浴びているTBSも人気、話題性に事欠かない桑田氏には食指を動かしているという。テレビ局関係者がこう言う。
「桑田のメジャー挑戦の時に全面サポートしたのが、日本テレビでなく、TBSだったのは業界内で有名な話ですからね。将来の横浜監督として迎え入れるための布石だろうと言われている」
桑田氏とKKコンビを組んだり、解消したりしてきた清原氏の方は専属契約をしているスポーツ紙の評論家デビューの記事で、「将来監督として現場に戻りたい」と明言。「出来れば、桑田君と監督として対決したい」と堂々と宣言している。