「内藤哲也!『ニュージャパンカップ』(NJC)1回戦、内藤哲也対ザック・セイバーJr.。ひとつだけ忠告しといてやるよ。いつ何時、どんな体勢でも、関節技、サブミッションホールドが取れるザック・セイバーJr.の技に、気をつけて下さい。ユー・ジャスト・タップアウト!」
6日の『旗揚げ記念日』大田区総合体育館大会で、内藤とのシングル対決に敗れたタイチのセコンドに付いていたTAKAみちのくが、リングに上がりマイクを掴むと、内藤をこのように挑発。これに対して、内藤は「今年、新日本プロレスに1回も来てない人間が『ニュージャパンカップ』にエントリーできるの? そんなレベルの低いトーナメントなの?」とザックが今年来日していたことに気づかない様子。「今年来日してますよ」と報道陣に指摘されると、「えっ? ザック来てる? ホントに? あー、ごめんなさい。俺、知らなかったわ。これだけ新日本プロレスのモバイルサイトをチェックしてる俺でも気付かないぐらい、ザック・セイバーJr.は存在感ないんじゃないの? 大丈夫? もうみんな知らないんじゃないの? ヒマなら、今から日本に来いよ。何かリアクション起こしてみろよ。何せ相手は、今プロレス界で最も輝いてる、そして、最もオイシイ内藤哲也だぜ。何かインパクトを残してくれよ」と内藤節で間違えをごまかしつつ、ザックに注文をつけた。
9日の後楽園大会、10日の愛知県体育館大会でそれぞれ行われたタッグによる前哨戦(ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン 対 鈴木軍)は1勝1敗のイーブンだったが、TAKAみちのくがザックのマネージャー役として機能しはじめており、これには内藤も「邪魔なヤツがいるなぁ。外道? ロッキー・ロメロ? そのモノマネですか? TAKAみちのく選手。でも、彼のアシストがあれば、もしかしたらザック・セイバーJr.、俺に勝てるんじゃないの?」と認めていた。しかし、その嫌な予感が翌日に的中するとは、内藤自身も想定外だったのではないだろうか。
昨年は、鈴木みのるの力を借りて柴田勝頼を破り、鈴木軍入りをすると棚橋弘至も追い詰めたザックだが、TAKAという頭脳派マネージャーを得たことで、アドバイスや存在が効いているのだろう。内藤の攻撃を読んで先を行くザックに対して、内藤から“焦り”の表情が伺えた。最後もデスティーノを読んだ上で、オリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デスをガッチリ極めて、TAKAの予告どおり内藤から「タップアウト(ギブアップ)」を奪って見せた。最後の流れはお見事の一言に尽きる。それぐらいのインパクトがあった。内藤も「彼のテクニックは十分に堪能した」とザックの実力を認めている。
ザックはこの日、前の試合でYOSHI-HASHIを破った飯伏幸太と15日の後楽園大会の2回戦で対戦する。TAKAと飯伏は昨年9月、TAKAのデビュー25周年記念大会でタッグを結成し、オカダ・カズチカ&外道と対戦している。飯伏を昔から知り尽くしているTAKAが、ザックにどのようなアドバイスを送りサポートするのか。ザックと飯伏は昨年夏に『G1クライマックス』で対戦しているが、TAKAがザックのマネージャーに付いたことで、飯伏にとっては内藤以上に厄介な相手と言ってもいいだろう。
負けたら終わりのトーナメントならではの波乱が起こるのが、NJCの醍醐味の一つでもあるので、誰が決勝に進出し、誰がどのベルトに挑戦するのか? 今年のNJCも最後の最後まで楽しめそうだ。
取材・文 / どら増田
カメラマン / 萩原孝弘