「今オフ、岩隈は複数年契約が満了します。マリナーズに残留するにせよ、新天地を求めるにせよ、かなりの好条件が提示されるのは間違いありません」(米国人ライター)
ノーヒットノーランを達成する前回登板の8月7日のことだった(現地時間)。他球団のスカウトがネット裏に集まり、地団駄を踏んでいたという。
「メジャーリーグのトレード期限である7月末日が近づくと、優勝争いをするチームは下位チームから主力選手を一本釣りします。下位チームは高額年俸のベテラン、主力を放出し、その交換要員として有望な若手をもらう。下位チームは来季に向けたチーム再建を始めるというわけです」(スポーツ紙記者)
優勝争いをするチームがギリギリまでトレード獲得するか否かで迷ったのが、岩隈だった。
「ドジャース、ブルージェイズ、ナショナルズの3球団が、7月6日の岩隈が投げた試合にスカウトを派遣したと報じられました。ヤンキースも興味を示していたようです」(米国人ライター)
ヤンキースは「本気だった」との声も聞かれた。トレードが成立しなかった理由はヤンキースとマリナーズの両方にあったらしい。
「ヤンキースは近年、シーズン途中の目先にこだわったトレードを続けたため、マイナーの有望選手を出し尽くしてしまった。マリナーズ側はヤンキースが提示した交換要員に納得できなかったようです」(前出・同)
マリナーズが岩隈を出さなかった理由は、2つ。1つはマリナーズにも2、3年後に先発ローテーション入りできそうな有望な若手投手が見当たらず、岩隈にまだまだ働いてもらわなければならなかった。もう1つは“経営陣の意向”である。マリナーズは昨年、実質的なオーナーだった山内溥氏が亡くなっている。しかし、その山内氏の右腕だったハワード・リンカーン氏は、今も球団社長の地位にある。そのため、
「日本人選手を残したい」
との意向が強く、ゼネラルマネージャーも釘を刺されたという。
「マリナーズは2012年のイチロー放出後、1番バッターが固定できていません。地元メディアがイチロー復帰を提言するような記事を何回か掲載しています。イチローに帰って来てほしいというラブコールですよ。また仮に、前田健太がポスティングシステムによる米球界挑戦を正式に表明すれば、マリナーズは躍起になると思う」(前出・同)
岩隈の契約は今季まで。有望な先発候補がいない以上、マリナーズは現状の700万ドル(約8億4000万円)を大幅に上回る条件提示をしてくるだろう。
「岩隈も自分の価値を十分認識しています。残留の条件として、3年以上の複数年契約を求めてくるはず。岩隈とマリナーズの交渉が難航すれば、ヤンキース、ドジャースなどは強奪に向けて動き出す」(現地特派記者)
マリナーズは岩隈を残したいが、広島・前田の出方も伺わなければならない。トレード期限の7月末にも注目されたが、今オフ、岩隈が米FA市場の主役に躍り出る可能性も高い。