桑田が現役続行宣言に驚いたのはテレビ局のスポーツ担当氏。
「パイレーツを解雇になったとき、桑田は周囲に引退を打ち明けていました。それを我々がキャッチし、来シーズンの解説者としてノミネートしました。上司にも脈あり、と上げたんですけど…。それが続行宣言ですからね、たまりませんよ」
上司から、がせネタ野郎、とこの記者は笑われたそうである。
桑田の大リーグ挑戦は散々だった。シーズン終了を待たずに、パイレーツから屈辱の“クビ”通告。ファームからメジャー昇格を伝えられたときの感激の涙から、大して時間は経っていなかった。
「ストレート?チェンジアップじゃないのか」とからかわれた遅いストレート。武器だったカーブは「ボールの縫い目が数えられるよ」。これが対戦した大リーガーたちの桑田評だった。
米国在住のスポーツジャーナリストは言う。
「パイレーツは桑田の子供じみたピッチングにガッカリしていた。ケガがクビの理由になったからいいようなもので、実際は使い物にならない投手といわれていましたね。それなのにまだ大リーグ再挑戦と言っているのだから驚きですよ」
また、日米の球界に精通しているスカウトの1人は、「大リーグ挑戦?そんなことを信用しているのかね。桑田の狙いは日本球界復帰と聞いていますけどね」といい、「それなりの準備もしていると聞いてますよ」とも言う。
それを裏付けるような話は確かにある。球界関係者によると「日本はどの球団も投手不足で悩んでいる、と現状を把握。桑田は一軍で十分投げられる、と自信を深めている」とのことである。
さらに具体的に言う。「桑田は外国人監督のチームにターゲットを絞っているようです。ロッテなどは、大リーグ出戻りのご老体コンビの小宮山、吉井を使っており、そのスタッフでプレーオフに進出。これは年齢より力を見る外国人監督だからできる、と桑田は読んでいます」
各球団にあたってみると、桑田獲得に乗り出すとはっきり口にしないが、商品価値は認めている。「桑田登板なら確実に観客動員につながります」と言った球団もある。
バレンタイン監督のロッテ、コリンズ監督のオリックス、ブラウン監督の広島は桑田の狙い目なのである。オリックスなどは「清原、桑田のレトロコンビで売ろうか、という声も球団内部にある」(担当記者)というから捨てる神あれば拾う神ありだ。
さらに最近、楽天が興味を示しているとの情報が流れた。野村監督はなにしろロートル山崎武を再生してホームラン王のタイトルを取らせた。“野村再生工場”で「桑田を蘇生させたい、自信もあると考えているようですよ」(担当記者)。楽天は今シーズン4位と大飛躍。来年はプレーオフ進出も夢ではない。
「野球の怖さを知らない選手ばかりや。経験者が欲しい」と野村監督は常々話している。桑田は優勝経験が豊富だし、大舞台も数多くこなした実績がある。「マー君(田中将大)を育ててくれるかもしれないな、桑田なら」と球団からも聞こえて来る。
大リーグ再挑戦は、日本に高く売るための桑田の戦術といっていい。桑田は短い大リーグ生活で“ビジネス感覚”も学んだようで、転んでもタダでは起きない…。