今日は取り付く島の無い無敵のロックバンド「神聖かまってちゃん」のライブに行ったお話。夜な夜なライブハウスに出かけ、今後売れそうなバンドを見つけては「ツバつけ取材」に挑む記者。やっとこぎつけたイケメン?ヴォーカルの男子はなかなか「手強い相手」で…。
たとえ店のスタッフに客の保護者に見られようと、(ひどい時は出演者の親と間違われる)ロック小僧たちのたまり場である渋谷のライブハウスに、夜な夜な若いコがやってるバンドの演奏を聞きにいく記者。20組に1組くらいの割合で、“お気に入り”ができてしまう。その日は前にライブを見て衝撃を受けた「神聖かまってちゃん」を追いかけて、都内某所のライブハウスへ。
もう業界ではかなり注目されている「神聖かまってちゃん」。そのライブはムチャクチャだ。ボーカルの「の子」という若い男がブツブツ何か言って暴れたり、パソコン壊したり、突然歌いだしたりする。生々しい“リスカ”の傷から流れた血が赤黒くこびり付いた腕をさらし、ワーワー叫んでいる「の子」。こんな傷を見るのは、大仁田厚のラスト・ファイト以来だ。でもナゼか演奏と歌はよくて、このバンドは未完成ながら人を引きつける魅力がある。だからして40のオバハンである記者も、無理して見に来ちゃう。
客席にダイブしてそのまま落ちたり、さんざん大暴れした後、「の子」がギターを床にたたきつけて粉々に。「神聖かまってちゃん」ライブはまるでプロレスみたいだった。
ライブが終わってCDなぞ売る「の子」に、取材とかこつけて話かけてみる。「神聖かまってちゃん」なんていう題名をつけといて、実際にかまうと、怯えた小動物みたいに記者を拒絶する「の子」。はじめて会ったおばさんに、心を開けと言われても無理だろうけど、こっちはそんなの気にせずグイグイつめ詰寄っていく。困った「の子」は袖をまくり、リスカで付けた「傷」を見せてくれた。なるほどステージ上ではボディペイントにも見えたが、先住民の儀式みたいに几帳面に等間隔でつけた傷は芸術的。自傷行為には反対だが、意外にきれいだと思ってしまった。
しかし「今は冬だからいいけど、夏は気をつけないと感染症になるわよ!」と、つい老婆心の言葉が出てしまった記者。溜まりかねた「の子」は、ウサギのようにその場から逃げてってしまった。
<コダイユキエ>イケメン好きの40歳独身女性記者
イラスト:ライブでぶっ壊されたギターは、あらかじめ「壊すパフォーマンス用」に開発されたシロモノだという