「魔界編<前編・後編>」では、2011年公開の「劇場版<沖縄編>」に続き、「前編」で沖縄本島を訪れ、今回は更に「後編」で“神の島”と呼ばれる宮古島まで足を伸ばした。沖縄の心霊スポットを目の当たりにした2011年の際に、すでに「2度と行ってはならない」と口にしていた“殴り込みGメン”だが、メガネ率の高いおっさん6人組が、心霊を挑発しながら今回はどんな活躍を見せてくれるのか。心霊スポット取材ルポ本「新耳袋殴り込み」シリーズの著者でもあり、“殴り込みGメン”の隊長的存在である、ギンティ小林にインタビューを試みた。
−−まず、ギンティさんの話を聞かせてください。昔から、霊感は強かった?
「霊感はまったくないです。なおかつ、画期的なビビリで…。だから、自分が心霊に関わるとは思ってもいませんでした」
−−そんな人がどうして?
「若い頃、偶然が重なって、雑誌『映画秘宝』でライターをやることになったのですが、僕の担当は評論よりも、体当たり取材がメインで。スタントマンの仕事の苦労を体験するために火だるまになったり、バイクからロープ1本で引きずられたりするのを体験するもので…。その中で、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99年)という、魔女伝説を追った3人の学生が森に入りそのまま行方不明になるというホラー映画の日本公開に便乗して『映画秘宝』で、『ブレア・ギンティ・プロジェクト』というものをやったんですよ」
−−なんですか。そのふざけたタイトルは?
「当時、関西の某所にあるとしか情報がなかった心霊スポット『山の牧場』を京都や大阪で聞き込みをして探しながら、道中にある心霊スポットを片っ端から潜入取材する…という無謀な企画で。これが『殴り込み』の原点になったんです。そんな『新耳袋殴り込み』誕生の経緯を詳しく知りたい方は、ぜひ『新耳袋殴り込み 第一夜』と7月25日に発売する『新耳袋殴り込み 第二夜』を読んでください! って、すいません…宣伝しちゃって」
−−2007年に『突撃!現代百物語 新耳袋殴り込み』(『新耳袋殴り込み 第一夜』と改題し2013年6月25日発売で角川ホラー文庫に収録。続編『第二夜』は7月25日発売)を、2008年にDVD『怪談新耳袋殴り込み!』を、2011年からは劇場版も公開されています。ただ、本作では、2度と行きたくないと言っていた沖縄に再び行くことになりました。心の準備は出来ていた?
「心の準備なんてまったくありませんでしたよ! むしろ、二度と行くことはないと思っていたぐらいなので…。2011年の『怪談新耳袋殴り込み!劇場版<沖縄編>』の沖縄の心霊スポットを巡っていくうちに、メンバーたちが次々と気が狂っていきましたからね。それなのに、また行くことになるとは…一説では『沖縄編』がヒットしたから、というプロデューサーの強欲かつ浅はかな理由で沖縄行きが決まったらしいんですけど」
−−そんな本作なのですが、沖縄本島編ともいえる「前編」では、「Kの塔」を訪れていますね。しかも真夜中に。「ひめゆりの塔」の少年版とも呼ばれている場所だと思うのですが。
「そうでしたっけ?」
−−ギンティさんは、一人で洞窟の中にある納骨堂まで行ってますが…。
「そんなことしたかな…すいません。そんときの記憶があまりないんですよ」
−−「後編」では宮古島に行っていますね。
「それはなんとなくおぼえてます。映画のなかで僕は、なにしてました?」
−−廃墟を発見しました。
「そうなんですか? 全然おぼえてないな…」
−−黒い影が映っていましたけど…。
「すいません。まったくおぼえてません…」
−−今、注目している心霊スポットは?
「大阪の『首つり廃墟』です。「殴り込み」の仕事で発見された場所なのですけど、現在進行形で続いている心霊スポットです。2008年か、2009年だったと思うのですが、大阪から東京に来たデザイナー兼カメラマンの人から聞きました。バンドのスチール写真の撮影もやっていて、背景にする廃墟を探すそうです。実は、『首つり廃墟』は下町の繁華街・新世界から細い路地を進んだ先にあるんです。その人が行ったら、3階建ての建物で、ひとつの面だけ壁がなくて、中が野ざらしです。金網のすき間から覗いたら、天井から靴がぶら下がっていて…」
ギンティいわく、その廃墟は、今までに死体が3回も発見されているという。ギンティは、廃墟を訪れるたびに、ぶら下がっていた靴の数が増えていたり、靴の種類が変わっていたりしている現象を、すでに写真や映像らで確認しているそうだ。
ギンティにとって、心霊とは、どんな存在かを聞いてみた。「お願いだから僕だけには取り憑かないでくれ(笑)。“殴り込みGメン”の他のメンバーには、ばっちり取り憑いてください!」という存在とのこと。
「怪談新耳袋殴り込み!劇場版 魔界編<前編・後編>」は、「幽霊を信じている方や、心霊現象を見てみたい方には、ぜひ見て欲しいです。また、信じていない方も、作品の中で、ひどいミッションをやらされて、ギャーギャー泣き叫ぶ僕たちの姿を見て、『俺の人生はこいつらに比べたらましかもしれない』と思っていただければ幸いです」と笑顔を見せた。
今年は猛暑も予想されているが、夏といえば怪談。「怪談新耳袋殴り込み!劇場版 魔界編<前編・後編>」には、「Kの塔」の他、「御嶽を潰して作られたホテルの廃墟」「廃墟ですすり泣く女の絵」なども登場する。同作で、心霊スポットに触れてみてはいかがだろうか。
(インタビュー・竹内みちまろ)