朝方はサラリーマンやOLらがこの横断歩道を起点に、それぞれの仕事場に向かって放射線状に散っていく。帰宅ラッシュの夕暮れどきは全くの逆だ。駅に向かう人の波が合流するポイントになるため、ときにすさまじいシーンを目の当たりにする。
赤信号に引っかかり信号を凝視する人たち。横幅いっぱいに広がり、信号が青に変わった途端「各馬いっせいにスタート!」とばかりに走り出す。競馬にたとえれば40頭立てぐらいか。逆行するとき、前方から幾千もの騎馬隊が襲い掛かってくるような錯覚に陥ることもある。
BGMは名曲「通りゃんせ」だ。赤信号に変わるまで約45秒とたっぷりあるから比較的長いほうだろう。通りゃんせはフルコーラス寸前まで奏でられる。
ゆっくり渡ればいいのにマナーの悪い歩行者が少なくない。信号が赤に変わってから走り出す命知らずまでいる。田町駅に限ったことではないが、慶大付属の中高生のほうが信号を守っている。創設者である福沢諭吉の教えがしっかりと受け継がれているようだ。
歩行者が多いため横断歩道の上には歩道橋も併設されている。まずまずの利用度だが横断歩道のランナーは減らない。古い標語を思い出した。狭いニッポン、そんなに急いでどこに行く。