今回の映画評は8月14日から公開される『ヤギと男と男と壁』を綴ろうと思います。
この映画は、ジョン・ロンソンさんの小説『実録・超能力部隊』が原作になっており、本当に実在した米軍超能力部隊を描いた豪華スター陣によるエンターテイメントコメディ映画です。超能力って改めて真剣に考えるとTVでしか見たことなく、勿論、目の当たりにした事などありません(まあ、殆どの人は僕と同じだと思いますが…)。
思い出としては小さい頃(高校くらいまで)はTV放送を観て、その時はリアルに反応した事でしょうか。「あなたにもパワーを送ります」って、超能力者が画面越しからいったセリフを真に受け、スプーンを、1時間くらい(自分の中で…実際の時間は15分足らずでした)擦っていました。当然、特に変化が起きた事はありませんでした。
前置きはこのくらいにして本題に入ります。この物語は、新聞記者のボブ・ウィルトンが離婚(妻と編集長の浮気)をした事により、人生のリスタートを画策。ジャーナリストとして、最愛の妻との思い出を断ち切り、戦争が始まったばかりのイラクへ行く決意をした事から始まります。
イラクでの現地取材を敢行したボブ。そこで、ビジネスマン風の米国人「リン・キャシディと知り合います。実はイラクで出会った「リン・キャシディ」なる人物をボブは数か月前に取材していたのです。その取材とは「リン」が自称超能力者で、自らは軍2番目に有能であると語っていた内容でした。ボブは「リン」に当時の取材内容を語り、真偽を問いただそうとしました。それを受け、「リン」は当初、ボブを警戒するのですが、彼はボブに“何かの繋がり”にも似た感情を抱き始め、行動を共にするようになるのです。
さて、二人にはどんな珍事が起きるのか? 又、珍事を起こしてくれるのか?
見所満載です。後は劇場で…。
この映画を見て、内容は当たり前ですが、キャストの皆さんも、もの凄く深いと感じました。皆さん、ギャグを演じているのでも、イタズラを楽しんでいるのでも冗談を言っているのでもなく「真剣」。まあ、設定が特殊部隊ですからね。「真剣」にもなりますか−−。
私の好きなコメディって、テンポが速く、ちょっとした隙に「ギャグ」「冗談」「イタズラ」が展開されていく感じなのですよ。それとは少し、違いますが、この映画は、僕自身、考えさせられる点が2つあり、コメディとは違う楽しさを味わいました。
一つは何かを信じ続ける事の大切さ。信じる物があるからこそ、色々な波乱をクリアでき試練も乗り越えられるのでしょう。「こうなりたい」「何が何でもこうなるんだ」と少年時代は皆さんも「夢」を信念持って追いかけていた事でしょう。これがいつの間にか「失敗」「挫折」「常識論との葛藤」…などで現実を直視するようになり、幼少の頃、描いていた「夢」を排斥。自分から目を背き、信じる事、チャレンジする事を止めてしまってるのではないでしょうか?
ボブにとっては、彼の周りで“活躍”する連中はイカレた男達ですが、彼らの真剣さにボブが胸を奪われて行く様子が爽やかに演じています。そして、考えさせられた点のもう一つは「ラストシーン」です!
これは劇場に足をお運びになって考えて頂きたい「場面」です。情報化社会と呼ばれる現代において、私達が知らされている所と知らされていない所。そして、その判断は誰がしているのか−−。本当に90分間、目を離せない映画です。
ちなみにこの映画邦題は、CS放送『チャンネルNECO』の「千原ジュニアの映画制作委員会」内4月放送分で千原ジュニアさんが「(ドッキリではなく)本物の宣伝会議に参加し洋画に邦題をつける、という企画から生まれたモノ。つまり『ヤギと男と男と壁』は千原ジュニアさんが名付け親であったという訳です。
『ヤギと男と男と壁』
監督= グラント・ヘスログ
【主なキャスト】
リン・キャシディ=ジョージ・クルーニー
ビル・ジャンゴ=ジェフ・ブリッジス
ボブ・ウィルトン=ユアン・マクレガー
ラリー・フーパー=ケウィン・スペイシー他
この映画は8月14日(土)、シネセゾン渋谷 シネ・リーブル池袋ほか順次全国ロードショーします。
<プロフィール>
西田隆維【にしだ たかゆき】 1977年4月26日生 180センチ 60.5キロ
陸上超距離選手として駒澤大→ エスビー食品→JALグランドサービスで活躍。駒大時代は4年連続「箱根駅伝」に出場、4年時の00年には9区で区間新を樹立。駒大初優勝に大きく貢献する。01年、別府大分毎日マラソンで優勝、同年開催された『エドモントン世界陸上』日本代表に選出される(結果は9位)。
09年2月、現役を引退、俳優に転向する。10年5月、舞台『夢二』(もじろう役)でデビュー。ランニングチーム『Air Run Tokyo』のコーチも務めている。