テレビ、スポーツ新聞などのパ・リーグ順位予想ではホークスを優勝候補に挙げる解説者が最も多かったはず。なのにこれを陰で否定するとはどういうことなのか…。
「マスコミ受けを狙ったんでしょう(笑)。ホークスの厚い戦力層を見たら、他5球団を優勝候補には挙げられません。でも、スポーツは『人間』がやるもの。感情に大きく左右され、戦力、数字では計り知れないハプニングが起きるもの」(ベテラン記者)
ご説、ごもっとも。プロ野球解説者がホークスを優勝候補に挙げつつも、「アブナイ」と見ている理由は、人間が持つ感情にあるようだ。
コーチ経験を持つプロ野球解説者がこう続ける。
「マンネリですよ。クローザーを任せられるサファテが開幕に間に合わないなど、戦力的なマイナス面もありますが、こちらは選手層の厚さで十分にカバーできます。しかし、それはあくまでも計算上の話に過ぎない」
球界で言うマンネリとは、危機感のなさだ。新しい戦力、若手選手がレギュラー選手を脅かし、チームに緊張感を与えていく。その点で言うと、ホークスは内川、松田などのベテランに頼りきったままだ。さらに工藤公康監督も5年目を迎え、相手チームはもちろん、ホークスナインも「何を考えているのか」など、性格面も熟知している。だから、代打や投手交代の場面で、選手たちは代わりに登場する選手を読める。
「やっぱり、そうだ」と思ってしまい、緊張感がなくなっているというわけだ。緊張感は数字以上の力をもたらす。マンネリによる緊張感のなさは、数字の下落につながりかねない。
「ホークスは”優勝慣れ”しています。勝負どころを分かっているので、絶対に落とせない、ここ一番という試合に勝利してきました。その反面、試合を諦めるのも早い」(選出・プロ野球解説者)
昨季、ホークスはペナントレースの優勝こそ逃したが、クライマックスシリーズを勝ち上がり、その勢いで日本シリーズも制した。
だが、この結果に孫正義オーナー、王貞治球団会長は満足していないという。ペナントレースの優勝を逃したことで昨季は「敗北のシーズン」と捉えたそうだ。しかし、仮に敗北と捉えたとしても、不可解なこともある。ホークスは18−19年オフ、目立った補強を行っていない。今の戦力で十分に戦えると思ったからだろうが、もし、今季、マンネリが理由で優勝を逃すようなことがあったら、どうなるのか。工藤監督が責任を負うことになるのかもしれない。
豊富な資金源を持つ球団でもある。その気になれば、シーズン途中でも外国人選手の獲得や、トレードを仕掛け、巻き返しを図ってくるだろう。今年のホークスは、試合そのものは淡々とし、フロントが騒がしくなる奇妙なシーズンになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)