それを受けて21日、台北市政府側は、株式譲渡に関する話について「聞いていない」とコメントしたと、現地メディアが報道。建設会社の遠雄建設事業は、現状では買い主は確定していないが、その可能性も排除できないと答えた。
台湾初のドーム型球場となる台北ドームは、4万人を収容する野球場のほか、ホテルやショッピングモール、シネマなどの商業施設を擁する全天候型多目的ドーム施設である。2012年4月に着工し、2015年末に完成する予定だったが、建設会社と台北市政府のトラブルで、工事が中断している。
この報道に対し、台湾のネットでは「ソフトバンクの春季キャンプ地は宮崎から台北に移転する可能性もあるんじゃない」「ソフトバンクグループの台湾リーグ参入に期待」「もう一度台湾でホークス戦を見たいな」などの声も上がった。
報道によると、孫氏がオーナーを務める福岡ソフトバンクホークスが台湾で公式戦を開催する可能性も浮上しているという。
台湾とソフトバンクホークスは、以前から友好関係にあった。2002年5月14と15日に、ソフトバンクの前身、ダイエーホークスとオリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)は、台北市立天母棒球場で日本プロ野球史上初の海外公式戦を行っている。この試合はダイエー主催で、台湾国籍の王貞治氏が監督として指揮し、試合前の始球式と国歌斉唱は当時台湾で大人気だった松浦亜弥が行った。
ダイエーの台湾遠征は公式戦だけではない。2003年11月14〜16日には、台湾代表チーム、台湾プロ野球の興農ブルズ(現富邦ガーディアンズ)の2チームと3連戦を行った。
「2002年から2004年まで、ダイエーは台湾のテレビ局に日本での試合の放映権を売っており、現地台湾でダイエー主催の公式戦が放送されていました。それをきっかけに、ダイエーファンになった台湾人もいます。その後ソフトバンクホークスに変わってからも人気は続き、2011年11月、台湾で行われたアジアシリーズで、ソフトバンクのユニフォームを着た台湾人が応援歌を熱唱するシーンもありました」(台湾スポーツライター)
また、今季パ・リーグには埼玉西武ライオンズの郭俊麟、呉念庭、廖任磊、千葉ロッテマリーンズのチェン・グァンユウ(陳冠宇)、李杜軒、北海道日本ハムファイターズの王柏融、東北楽天ゴールデンイーグルスの宋家豪、オリックス・バファローズ育成の張奕が在籍。セ・リーグには読売ジャイアンツの陽岱鋼、阪神タイガースの呂彦青と多くの台湾選手が在籍している。しかし、ソフトバンクには台湾人選手は在籍していない。
「現在ソフトバンクに台湾人選手が在籍していないので、西武や阪神と同じように“台湾デー”など、インバウンドを目的としたイベントを開催するのは難しい。孫氏は“台北ドームのオーナー”になることをきっかけに、“台湾マネー”を獲得する狙いがあると噂されています」(同)
前身球団では親交のあった台湾との関係性を復活させられるのか。台北ドームの新しい経営者はまだ正式発表されていないが、現地では期待の声が高まっているようだ。
文・内木未希