例年の様に数多くの選手が所属球団から戦力外を言い渡された昨年のシーズンオフ。その後、現在までに再びNPBのユニフォームを身につけることが出来たプレーヤーは数えるほどしかいない。何人もの野球人が球界を去った中、新たなチームに移り今シーズンもグラウンドに立ち続けるベテランもいる。
■現役に固執、新天地で再起を
今月4日、オリックスバファローズは一人のベテラン選手の獲得を発表した。昨シーズン限りでヤクルトスワローズから戦力外通告を受けていた成瀬善久がキャンプ先で2019シーズンの選手契約に至った。千葉ロッテからFA移籍したヤクルトでは期待通りの活躍を見せられず、昨年はキャリアで初めて一軍のマウンドに登ることが出来ずにシーズンを終えた。2000年代、ロッテでタイトル獲得や日本代表にも選ばれた実力者でヤクルト退団後にトライアウト、入団テストを経て今季もプレーする機会を手繰り寄せた。
かつての指揮官・西村徳文新監督のもと、再び舞い戻ったパリーグを主戦場とし、今なお健在の制球力を武器に再起を図る。
指導者への転身の打診を断わり現役続行を選んだ男もいる。前楽天の細川亨だ。
西武ライオンズ時代には球界No.1といわれたリードを発揮し、以降、ソフトバンク、楽天でプレー。あくまでも現役に拘り、パリーグ4球団目となる千葉ロッテのユニフォームに袖を通す。今季6人中、自身以外の5人が20代という若いロッテ捕手陣、積み上げられた経験を伝えることでの全体の底上げが期待される。「若いキャッチャーに勉強してもらえるように頑張る。日本一になる為、チームに貢献したい」
18年目を迎えるベテランは来るべき新シーズンも捕手としてグラウンドで躍動する。
■日本一の翌日に戦力外を通告されるも
ヤクルトスワローズには二人のベテラン右腕が加わった。前ソフトバンクの寺原隼人と五十嵐亮太だ。
両投手在籍の6年間、ホークスは4度の日本シリーズ制覇を成し遂げている。常勝軍団において様々な場面でマウンドに登り続けたベテランの存在価値は極めて重要だったものの、ともに昨年の日本シリーズ優勝の翌日、球団より戦力外を通告された。それでも「血の入れ替え」を受け入れ、さらなる新天地を求めた。
新たなユニフォームで先発にも意欲をみせる寺原、5月には40歳を迎える五十嵐も古巣へ10年振りに復帰、二人ともに一軍キャンプのブルペンで汗を流している。武器として鳴らした豪速球に加え、経験とともに類まれな投球術も身につけた両右腕の加入はスワローズに4年振りの優勝をもたらすか。
キャンプでは各球団とも主力や期待の若手、そして希望に満ちてプロの世界に足を踏み入れた新人選手の話題が溢れる。反面、キャリアを重ね、いくつもの球団を渡り歩き、それでもプレーすることに拘ったプレーヤーの姿もやはり魅力的であることに変わりはない。そう多くはないであろう、与えられるプレーの機会において、全力でそれぞれの役割を果たそうとするベテランがこの上なく頼もしいことも我々は知っている。
今月末からはオープン戦も始まる。2019年シーズンの開幕はもうすぐそこだ。(佐藤文孝)