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〈目からウロコの健康術〉 『放置しても安全』は全くの誤解!? 早期発見で「前立腺がん」を完治!

 「前立腺がんは安全なので、放置していても大丈夫」という話を聞いたことはないだろうか。この話を曲解してしまうと、取り返しのつかない事態を招きかねない。

 前立腺がんは、肺がんや大腸がんと同じように、命を奪う恐ろしい病気。まず、その認識を持つことが大事だと専門家は言う。
「いまだに前立腺がんは安全だと思い込んでいる人が多いことに、私たちは驚いています。早期のがんが前立腺内に溜まっている状態を『早期』と言いますが、これにはいくつかのタイプがあります。早期の前立腺がんのうち、50〜55%は前立腺のほぼ全域にがんが分布しているもの、35%は限局しているもののある程度のボリュームがあるもの、そして15%はサイズが小さくて悪性度も低く、放置しても悪さをする危険性の低いものなど、この3タイプです。このうち、最後に挙げたタイプについては、特に治療はせず、経過観察だけを行う“監視療法”が取られることになります」

 こう説明するのは、昭和大学横浜北部病院秘尿器科松原克己医師だ。

 さらに、同医師は続けて
「最後に挙げたタイプ、『小さくて悪性度も低いがんの“監視療法”』が、メディアでたびたび取り上げられる中で、『前立腺がんは放置しても安全』という誤解が広まったのでしょう。その経過観察となるのは、早期前立腺がんの15%にすぎず、残る85%は何らかの治療をする重い病気なわけです。きちっと治療を受ければ分かることですが、曲解してはいけません」
 と警鐘を鳴らす。

 がんが前立腺の中だけにとどまり、他の臓器への転移がなければ、手術や放射線治療などの適切な治療を行うことで完治も期待できる。しかし、前立腺から離れた場所に転移している場合、5年生存率が45%になると言われるので、いかに早い時期に発見し、治療するかが大きなカギとなる。

 遠隔転移している場合は、がんの進行を抑える治療となるため、完治を目指すことが難しくなる。
「したがって、前立腺がん治療において最も重要なことは、存在するがん細胞をいかに『切除』、または『消失』させ、それ以後の『再発』や『転移』を未然に防ぐ事ができ、さらに、その病気を克服できるかが課題です」(同)
 本来、患者側が考える前立腺がん治療の目的は、決して「5年生存率の向上」などではなく、「克服」「完治」することにある。

 専門家は次のように説明する。
「しかし、そうは言っても標準治療単独での、前立腺がんの克服は、まだまだ満足のいくレベルではなく、今以上に治療効果を上げ、『がん細胞を消失させること』と『転移や再発を防ぐこと』で本来の目的である前立腺がんの“克服”に向けて繋げていくことだと思っています」

 ところで、前立腺がんの原因の1つに、男性ホルモンや食生活、遺伝子などが密接に関与していることをご存知だろうか。前立腺がんの発生や増殖に男性ホルモンが深く関与していることは分かっているが、どのようにがんができるのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていない。

 ただ、前立腺には前立腺液を作る働きがあり、前立腺内には前立腺液を作るための管状腺がある。この管状腺の細胞は、日々新しい細胞が入れ替わっており、その過程で細胞が突然変異してがん化し、増殖したのが前立腺がんと言われる。危険因子として加齢や食生活、遺伝が関係することも分かっている。

★食の欧米化により患者数が増加
「こんなデータがあります。前立腺がんは欧米で患者数が非常に多いのに対し、以前は日本ではほとんど発生しませんでした。しかし、日本の食生活が和食から洋食に変化していくにつれ、前立腺がん患者数も増加するようになりました。和食は魚や野菜が中心であり、生活習慣病の改善も期待できる健康食ですが、洋食は肉やチーズ、バター、牛乳など動物性脂肪が非常に豊富であり、高脂肪食品を摂りすぎると前立腺がんのリスクが高くなります」

 こう語るのは、管理栄養士で料理研究家・林康子氏である。そして、さらにこう続ける。
「日本で前立腺がんが増えているのは、食の欧米化にあります。まだこの増加傾向は衰えていません。そのため、近い将来、日本人男性の罹患者数で、前立腺がんが1位になると予想されています。自分の食生活を振り返り、動物性脂肪を摂りすぎないように食生活を見直してみる必要があります」

 とはいえ、前立腺の正常な細胞ががん化した場合、そのがん細胞が健康上の問題となるまで大きくなるには、どれくらいの期間を要するのか。実際、「20〜30年」かかるとされる。その一方で、若い人に発症することはほとんどないそうで、60歳以上になると患者数が極端に増えるのだ。

 人口10万人当たりの年代別・前立腺がんの患者数を見ると、60歳では100人程度だが、70歳代になると300人、80歳代では600人を超えるようになる。
「発症が高齢者に多いため、がんの進行が他のがんに比べると遅いのも特徴の1つです。しかも、がんの状況によっては無理に『治療』しない場合もあります。このあたりの事で『前立腺がんはほっといても大丈夫』と誤解されてしまうのでしょう」(前出・専門医)

 近年は、1本の注射器から取る血液検査で大半の病状が判別できる時代。とはいえ、前立腺の細胞がんを見つけるには、前立腺の生検が必要になる。肛門と陰嚢の中間、もしくは肛門から器具を挿入して直腸越しに針を刺し、前立腺の組織を採取する方法だ。
「通常は6〜12本の針を打ち、1本でもがん細胞が見つかればがんと診断されるが、外れればがんは見すごされてしまう。この検査の精度がその後の治療の成果を大きく左右するのです。ただ、肛門から器具を入れる方法は、痛みと出血、または感染症のリスクを伴います。MRI検査でも、安全性を考慮して経皮的針生検を行っています」(同)

 ’20年には男性のがんの中で「肺がん」の次に多いがんになると予測されている「前立腺がん」。特に50歳以上の男性は、喫煙や多量飲酒、食事などの生活習慣を改善することが、予防につながるのだ。

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