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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 最終局面迎えた安倍・財務省戦争

 佐川前長官不起訴へ――。5月18日の読売新聞がそう伝えた。
 虚偽公文書作成罪の成立には、決裁権限を持つ者が文書の趣旨を大幅に変える必要があり、大阪地検特捜部は、今回の改ざんがそこまでの変更には該当しないと判断したという。
 また、佐川氏は、森友学園との交渉記録を「廃棄した」と国会で答弁し、公用文書等毀棄容疑でも告発されていたが、これも不起訴とする方針だ。さらに、国有地を8億円引きで売却し、国に損害を与えたとして告発された近畿財務局幹部も不起訴。
 国民の財産を二束三文で売り飛ばし、決裁文書を改ざんして国会と国民をだまし続けた財務省の職員たちは、刑事責任という面では、無罪放免となったのだ。

 検察は、捜査のために容疑者の銀行口座や税務申告のデータが不可欠だから、結局のところ財務省を敵に回すことができない。今回の不起訴処分は、まさに検察の財務省への忖度だと言えるだろう。
 このまま行ったら、財務省は一切傷つかず、財務省の宿敵である安倍総理だけが政治的に追い詰められるという形で、森友学園問題は、財務省の完全勝利に終わってしまう。

 ただ、安倍総理には反撃のカードが残されている。もちろん、それは消費税率5%への引き下げだ。カードを切るのは、準備期間を考えると、来年3月までなら可能だが、私はタイミングはもっと早いのではないかと考えている。
 一つの理由は、自民党の若手国会議員でつくる『日本の未来を考える勉強会』が5月11日に会見を開き、デフレからの完全脱却に向け、消費税の凍結・減税や基礎的財政収支の黒字化目標撤廃を主張する提言を発表したことだ。
 これには自民党内の国会議員34人が賛同しているという。安倍チルドレンが中心の提言ではあるが、党内に消費税引き下げの意見が存在することが、アピールされたのだ。

 第二の理由は、GDP統計だ。5月11日に発表された今年1〜3月期の実質GDPは、前期比▲0.2%(年率▲0.6%)のマイナス成長となったのだ。四半期別のGDPがマイナス成長になるのは、2年3カ月ぶりだ。しかも、GDPデフレーター(GDP全体の物価水準)は、前期と比べて▲0.2%と、デフレに戻っている。
 安倍総理は、昨年の総選挙の際に、「消費税は、'19年10月から予定通り引き上げる」としていたが、同時に「リーマンショック並みの経済危機が来た場合は話が別だ」とも言っていた。つまり、今回のGDP統計が示したマイナス成長は、消費税率凍結や引き下げに向けての絶好の口実になるのだ。
 ただ、3カ月後には、新しいGDP統計の速報が発表される。次回の統計でマイナス成長が続く保証はない。しかも、9月に自民党総裁選挙があることを考えると、安倍総理がカードを切るタイミングは、8月までということになるのではないだろうか。

 ポスト安倍は、全員消費税率の引き上げに賛成していることを考えると、消費税率が上がるのか、そうでないのかは、3カ月以内に決まる可能性が高い。そしてそれは、日本経済がデフレに舞い戻るかどうかも、決めてしまうのだ。

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