あくまでも、城島の捕手への強いこだわりだった。会見で「今の体の状態では給料はもらえない。バリバリやってくれるだろうという信頼を裏切ってしまった。ファンに対しても球団に対しても、自分ができる精いっぱいのケジメ。高給取りになってから、2年続けてまともに活躍できなかったら(引退)というのが自分のルール」、「5月に腰の手術をし、今季捕手をするメドが立たなくなったのが一つの決断の理由。試練を一個一個乗り越えるたびに成長してきたと思うが、今回のケガは自分には乗り越えられない大きな壁だった」と、その胸中を語った。
94年ドラフト1位でダイエー(現ソフトバンク)に入団した城島は、捕手としては日本人初のメジャーリーガーとしても活躍。09年オフに4年間在籍したマリナーズを退団し、阪神と4年契約年俸4億円の破格の条件で契約した。
1年目の10年は全144試合にフル出場。打率.303、本塁打28、打点91で、ゴールデングラブ賞も受賞するなど、4億円の年俸にふさわしい働きを見せた。だが、シーズン終盤に左ヒザを痛め、オフに手術を受けたことで暗転。11年の開幕には間に合わせたが、6月には右ヒジも痛めて出場選手登録を抹消。8月には古傷の左ヒザの再手術に踏み切って、シーズンを棒に振り、わずか38試合の出場にとどまった。
体調が万全ではないため、今季は捕手を断念し一塁手にトライ。外野の練習にも取り組んだ。開幕メンバーには入ったが、今度は坐骨神経痛のため、5月11日に出場選手登録を抹消。椎間板ヘルニアの手術を受けた。8月には2軍戦で左ヒザ裏の肉離れを起こし、再び戦線離脱。9月に2軍戦に復帰したものの、1軍には戻れず。左ヒザ、右ヒジ、腰の故障で満身創いのなかで、城島は捕手としての復活は困難と判断し、引退を決めた。今季は24試合の出場で、39打数7安打0本塁打5打点、打率.179と寂しい成績だった。
9月25、26日のウエスタンリーグ、ソフトバンク戦(雁の巣)には先発出場。2試合で5打数4安打2打点の活躍で、打撃では元気な姿を見せていただけに、引退は残念。
城島は来季まで、契約を残していた。城島が捕手での復帰をあきらめ、体の負担が軽い一塁や外野でプレーすれば、現役を続けることができただろう。うまくいけば、4億円の年俸並みの働きはできたかもしれない。だが、城島は捕手としてのプレーにこだわって、ユニフォームを脱ぐ。
城島の引退に、球団はじくじたる思いに違いない。なんせ、年俸4億円である。3年間で支払った年俸総額は12億円で、まともにプレーしたのは1年だけ。球団にしてみれば、「捕手でなくてもいいから、来年活躍してくれれば…」というのがホンネだろう。これでは、球団としての損得勘定は大損というしかない。
(落合一郎)