新・正捕手の城島健司(33)は開幕第2戦でサヨナラアーチを放つなど、存在感を見せつけている。移籍当初は城島の加入に批判的な声も聞かれたが、結果を出すことで全ての雑音を封じたようだ。しかし、それ以上に評価を高めているのは、レギュラーを外された矢野燿大(あきひろ=41)だという。
「開幕戦、真弓(明信)監督は代打の代打で、矢野を送りました。昨季までなら、最初に代打起用した桧山(進次郎)のメンツも考え、『代打の代打』なんて采配はなかったはず。まあ、代打層がさほど厚くなかったチーム事情もありましたが」(ライバル球団スコアラー)
実績のある矢野が控えていることで、攻撃面でも相乗効果が見られる。
矢野が人望を高めている理由はそれだけではない。盛り立て役に徹しているからである。
「今春のキャンプでもっとも声を出していたのは、矢野でした。テレビカメラは城島ばかりを追い掛けていたけど」(前出・同)
確かに、矢野は内・外野の連携プレー、サインプレーの練習時、もっとも声を出していた。ミスをした中堅、若手のもとに走り、丁寧に助言を送るシーンも見られた。そういう姿を見ると、「阪神の正捕手は、やっぱり矢野で…」と思ってしまうのと同時に、“元上司”岡田彰布・オリックス監督の「使わないのなら、トレードでウチが獲る」発言が重なってくる。在阪球団職員の1人がこう言う。
「矢野も新天地を求めることを考えた時期があったそうです。岡田監督は『まだレギュラーでやれる』と矢野にエールを送る意味合いもありました。ソフトバンク、横浜、ヤクルトなど捕手を補強したいチームは、少なくありませんからね」(同)
それでも、矢野は阪神残留を選択した。星野仙一シニアディレクターの影響である。城島獲得に動いたのもそうだったが、矢野を引き止めたのも星野SDだった。
「レギュラーを外されたときに、本当の人間性が問われる」
この言葉で、矢野は残留を決めたという。「人間性が問われる」と言われ、ベンチスタートの多くなりそうな今季こそ、チームのために尽くそうと思った。阪神の開幕好スタートは矢野のおかげかもしれない。
こんな情報も囁かれている。
「星野SDは強かな人ですよ。キレイゴトだけじゃありませんよ。矢野に将来の監督の約束手形を切ったなんて話もないわけじゃない」(関係者)
しかし、阪神ナインが矢野を信頼し、真弓監督も戦力として必要と思っているのは本当だ。現在の矢野の姿を見ていると、指導者としての資質は十分にある。城島もヒーローインタビューで少し遠慮がちな言動に徹しているのは、矢野の影響だろう。