「三木谷氏と星野監督が巧くやっていけるかどうか…」
そう懸念する声は各方面で聞かれた。
開幕直前、両者が衝突したのは有名な話。本社所用による海外出張で、三木谷氏、島田亨オーナーの2人が激励会を揃って欠席し、それに星野監督が噛み付いたのである。本社・代表取締役会長兼社長として代役をたてることの出来なかった多忙さも分かる。関係者によれば、三木谷氏は星野監督の苦言に何の反論もせず、頭を下げたという。
「三木谷氏が球団オーナーに復帰すれば、球団経営や戦力面に関与するのは当然の流れ。三木谷氏も『プロ野球のことに無関心』と思われるのは心外でしょうし、星野監督が各メディアにコメントした通り、直接意見交換する機会はかなり多くなると思われます」(球界関係者)
三木谷氏も今まで以上にグラウンドに顔を出すようだが、『協力』という点において、その解釈がかなり異なるようだ。
楽天は2011〜2012年オフ、戦力面での目立った補強はしていない。それは三木谷氏と球団上層部の方針によるものだった。星野監督は親しい球界要人に「補強? カネがあるのに出さんのや…」とボヤいたこともあるそうだが、戦力補強に関する両者の考え方は大きく異なる。星野監督は中日指揮官時代からそうだったが、大金を出さなければ良い選手は集められないと思ってきた。楽天指揮官に着任してまもなく、松井稼頭央、岩村明憲の元日本人メジャーリーガーを獲得したのもその一環だった。このときは三木谷氏側が折れ、新監督就任のご祝儀的な意味合いで獲得資金を出したが、松井は打率2割6分、岩村は1割8分3厘…。「このまま終わる選手ではない」というのが周囲の一致した意見だが、球団側は財布の紐をかたくしてしまった。
「三木谷氏は結果を残した選手には昇給を惜しみません。しかし、『名前』にはお金を出すつもりはない、と…」(前出・関係者)
星野監督は何度も補強の必要性を訴えたが、三木谷氏と球団側の考え方は変わらなかった。
今回のオーナー職復帰によって、さらなる“健全経営”が徹底されるともいう。優勝という目指す方向は合致しているが、両者が辿ろうとする道程はかなり異なる。その影響だろう。ホワイトソックスの福留孝介が事実上の戦力外通告を受けたとの一報が届いた23日(日本時間)、星野監督は「獲得? オレはそういうのには参加しないの!」と報道陣に言い放ったが、元教え子の去就が気にならないはずがない。
「福留はキャンプイン直前にホ軍入りが決まりました。中日時代に逆上る師弟関係もそうですが、星野監督が本気で獲得しようと思えば、獲れない選手ではなかった」(プロ野球解説者の1人)
星野監督の開き直りとも取れる福留争奪戦への不参加表明は、三木谷氏への当てつけかもしれない。