映画「マルサの女」でもお分かりのように、国税局査察部が脱税をかぎわける嗅覚は半端ではない。昨年度の査察でもまた、マルサの活躍によってそのしみったれた手口が明るみに出た。
ケース1は「金のうまい棒」型。紙幣ではどうしてもかさばる大金をグラム単価の高い金の延べ棒に換え、コンパクトにして隠す方式だ。自宅ロッカーや親族宅などに金の延べ棒約615キロ(約18億円相当)を隠したケースが摘発された。
ケース2は「作物」型。査察の際、まるで農作物かなにかのように現金7000万円をブリキ缶に入れて畑に埋めていた案件があった。タイムカプセル型といってもいい。
ケース3は、オーソドックスな「床下」型。今回の摘発では、自宅エレベーターの床下に現金1億5000万円を隠した事例が見つかった。
関係者は「脱税の手口は性交の妙技“四十八手”を軽く超える。しかし、着眼点はそう変わらないので絶対に隠しきれないものなんです」という。
それでも懲りずに毎年脱税が摘発され、追徴課税を課せられる輩が続出しているわけだ。
さて、昨年度の脱税総額は不景気を反映してか前年度に比べ3億円減。“ミニバブル”と呼ばれた都心部の地価高騰や、鉱物・金属市場の世界的な価格上昇の影響で、不動産業者や鉄くず業者らによる法人税の脱税が大幅に増えたという。
告発総数は153件で、1件当たりの平均脱税額は1億6300万円。
税目別のトップは、97件で前年度の56%増だった法人税。脱税額は186億円で、2倍以上になった。一方、個人の所得税は40件(前年度比30%減)。脱税額は40億円で半分以下に減った。
不動産業では、都内の一等地を地上げした東京都港区の会社を、法人税17億円の脱税容疑で告発した大型事案があった。