インフルエンザにかかったことが原因で敗血症になり、四肢を失った女の子の両親が敗血症の危険性を啓蒙する活動をしていると7月15日、海外ニュースサイト「7news」が報じた。
同記事によると、豪・ブリスベンに住む6歳の女の子、ミアちゃんは4歳だった2017年10月に手足を切断することになったという。ある金曜日の夕方、ミアちゃんは母親に腹痛を訴え、夜中に発熱と嘔吐を繰り返したという。土曜日の朝、かかりつけ医は胃炎と診断。しかし、ミアちゃんが午後になって意識障害を起こしたため、救急外来を受診すると、B型インフルエンザとウイルス性筋炎と診断され、自宅で安静にしておくように言われたそうだ。日曜の夕方になって、まだぐったりして寝ているミアちゃんの足に紫色の発疹を見つけた両親は、ミアちゃんを連れて再び救急外来に駆け込んだという。
ミアちゃんは、感染症が原因で臓器障害を起こす「敗血症」と診断され、治療のためただちに小児集中治療室に移された。検査でミアちゃんの体から、敗血症の原因となったA型および、B型インフルエンザウイルスを含む3種類のウイルスと、1種類の細菌が検出されたという。ミアちゃんは敗血症が重症化。血圧が著しく低下する敗血症性ショックで、心臓から全身に十分な血液を送り出すことができなくなったため、脳やそのほかの重要な臓器に血液を送る処置が続けられたそうだ。しかし、血液が届かなかった手足は壊死したという。
両親は、医師から四肢を切断することがミアちゃんにとって最良の方法だと告げられ、四肢切断を決断するよう迫られたそうだ。ミアちゃんの四肢がどんどん黒く変色していくのを目の当たりにした両親に、選択の余地はなかったという。
ミアちゃんは敗血症で入院してから数週間後に、両手の肘から下の切断手術を受け、2018年1月に両足のひざから下を切断したそうだ。両親は、もし1日早く敗血症に気づいて治療を始めていれば、ミアちゃんは四肢を失わずに済んだのではないかと悔やんでいるという。
現在、ミアちゃんはとても元気だといい、義足で歩く練習と、残った腕の一部を使って文字や絵を描く練習をしているそうだ。
このニュースが世界に広がると、ネットでは「女の子と両親の気持ちを考えると、つらくて涙が出た」「敗血症がこんなに怖い病気だとは知らなかった」「インフルエンザを甘くみてはダメ」といった声がある一方で、「なぜ医者がもっと早く敗血症と気づかなかったんだ」「誤診をした最初の2人の医師と病院を訴えるべきでは?」と医療機関を非難する声も挙がっていた。
日本集中治療医学会の敗血症情報サイトなどによると、敗血症は、いつ、誰にでも、どんな感染症からも発生し、致死率の高い非常に恐ろしい病気だが、国内での知名度は低いという。
敗血症とは、感染症によって体内に侵入したウイルスや細菌といった病原体の増殖を制御する免疫システムが過剰反応し制御不能に陥り、自らの臓器に障害を引き起こすことをいう。
罹患者の4人に1人が死亡するといわれ、国内では1年間に推定約10万人が死亡しているともされる。また、敗血症が重症化して、異常な体温低下や血圧低下などの敗血症性ショックを起こすと、致死率は約40%に達するそうだ。そのため、早期発見と早期治療が重要になるという。
敗血症の予防には、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど感染症予防のためのワクチン接種や、うがいや手洗いの徹底などが有効だという。
この病気を知って正しく理解することが、早期発見と早期治療につながり、ひいては重症化を防ぎ、大切な命を守ることにつながる。
この記事の引用について
Parents warn of deadly medical condition after nearly losing daughter to flu
https://7news.com.au/sunday-night/parents-warn-of-deadly-medical-condition-after-nearly-losing-daughter-to-flu-c-244665
日本集中治療医学会 敗血症情報サイト
http://敗血症.com/index.html