球界幹部の一人が言う。「あーあ、勝っちゃったのか…。これが球界の感想です。つまり、勝ってもらわなくてもよかった、ということですね。星野監督に対する抵抗感は強いですからね…」
アジア予選に勝ってあれだけ世間を盛り上げたのだから、だれもが「さすが仙ちゃん」と言いたいところなのだが、肝心の野球界はプロもアマも素直に喜んでいるわけではないというのである。「ここが長嶋ジャパンと大きく異なるところ」(ベテラン記者)
またある球界関係者からは、こんな声が上がる。「あれだけ資金を潤沢に使えば勝って当たり前だよ」と。
星野ジャパンの担当記者によると「長嶋さんの時より3倍は事前に使ったと言われています。コミッショナー事務局を始め球界の事務方は、やれ視察だ、やれ偵察だ、とやりたい放題で請求書のヤマに真っ青になっていましたよ」
そういえば星野監督は優勝後のインタビューで偵察のスコアラー3人を褒めあげ「こんな優秀なスコアラーを誘わない球団はおかしい」。金を使えば勝てるということを球界の批判派にぶちかましたのである。ついでに明日のない3スコアラーの就職売り込みまでやったのだから抜け目がない。
帰国後はテレビに出まくり、戦後を語っていた星野監督。キャスターたちの持ち上げ方もバカバカしい限りで、なかでも決勝の台湾戦で逆転した攻撃(同点スクイズと宮本の三塁への走塁)に関してはあきれるほどの“ど素人会話”を展開した。
「高校野球じゃあるまいし」と切って捨てるのは大物評論家。「スクイズまでして勝つ相手じゃないだろうに。日本は力がありません、とへりくだっているだけじゃないか。相手に小バカにされるだけだよ。失敗したら“無能指揮”といわれるだけ。お粗末きわまりない」
とくに絶賛の声も上がった宮本慎也の走塁はアマからブーイングが噴出している。あの場面、無死一、二塁で二塁走者の代走となった宮本は、次打者のバントで三塁にスライディング。そのとき三塁手の足を蹴飛ばして一塁送球を阻止したプレーだ。果敢な盗塁に中継アナも絶叫したものだ。
「宮本は右足で滑り左足で三塁手の足を蹴飛ばした。最初から蹴飛ばす意図があったということです。三塁手の足はベースの真上を踏んでいたからクロスプレーでもなんでもない。宮本はただのラフプレーです。これをテレビ解説の古田敦也(前ヤクルト監督)がベタ褒めしました。この解説にはあきれました。もし三塁封殺だったら送球妨害で一塁もアウトの併殺ですよ。あんなプレーを“プロの技”とやられたらアマが困ります。それでなくとも今はラフプレーを厳しく処罰していますからね。古田の野球センスを疑いますよ」(高校野球監督経験者)
オリンピックといえば“アマの大目標”だった。それをプロが横取りしてしまった。現在でも「五輪はアマに返せ」との意見がアマ、プロ問わず根強くある。プロの方は「プロにとって五輪のメリットはゼロ。しかも野球は北京で終わり。出場しても意味なし」(在京球団幹部)
それでも星野ジャパンは来年8月、北京に行く。しかしプロ球界は新たな悩みを持つ。
「星野監督ら首脳陣の手当アップは避けられないうえに、交際費など経費も間違いなく膨らむ。ファンは経済事情を理解しないでしょうが、大変なんだよ」と球界幹部。
アジア制覇で、北京切符手に入れた星野ジャパンだが、球界関係者の多くが、素直に讃える気にはならないのもよく分かる。