“野球王国キューバ”が自国選手の海外移籍(メジャーリーグは除く)を認め、巨人がフレデリク・セペダを獲得したのを皮切りに、DeNAにはユリエスキ・グリエル、千葉ロッテにはアルフレド・デスパイネが入団。さらに巨人は、20歳の投手、エクトル・メンドーサの“追加獲得”した。
「キューバから亡命した多くの選手がメジャーリーグで活躍しています。キューバ野球のパワー、身体能力の高さを考えると、日本でも活躍してくれると大多数が信じていました。キューバ政府が『交渉可能選手』のリストをすでに用意しており、日本の各球団はそのなかから選択するしかありませんでしたが」(プロ野球解説者)
各球団の戦力事情もあり、全員に「ダメ出し」することはできないが、ペナントレースを動かすような存在感は見せてくれなかった。
キューバ選手との契約は、現時点で基本的に1年だが、米国と国交を断絶したままの状況や、契約金や生活環境で比較した場合、韓国、台湾、メキシコのプロ球団は日本に太刀打ちできないだろう。今後、キューバ政府が“現役バリバリの主力選手”の海外行きを認めるか否かは分からないが、キューバ選手の正規獲得ルートは日本プロ野球界が独占したと言っても過言ではないだろう。
「キューバ政府は基本的に交渉の門戸を常に開いています。これまでは12球団渉外担当者が足繁く通って、米マイナー球団や代理人との信頼関係を築いたり、2、3年分の追跡調査をしてから正式な獲得交渉に入るという球団もありました。キューバ政府は基本的にNPB12球団と平等に付き合っていくつもりなので、キューバは交渉がまとまりやすいルートとも言えます」(前出・関節者)
だが、かき消すことのできない『現実』もある。外国人選手の「当たり、外れ」だ。どんなに緻密な調査をしても、日本球界に適応できない外国選手もいる。それを補う方法−−。他球団が解雇した、もしくは契約更新でもめて退団した外国人選手を拾うのだ。爆発的な数字は期待できないが、打率、打点、本塁打数は確実に計算できる。
おそらく今後、NPBの外国人獲得ルートは、米国、中南米から新規獲得する選手に『キューバ・ルート』が加わるが、確実に計算の立つ“外国人選手の使い回し”もなくならないだろう。
「広島カープの外国人選手がどうなるのか、他11球団は注視しています。独自ルートで発覚・獲得したバリントン、ミコライオ、キラ、エルドレッドの4選手が優秀なうえに、今季は好左腕のフィリップスを加え、ドミニカのアカデミー出身のロサリオも活躍しています。途中加入のヒースも好投している。外国人枠の問題を考えると、この6人をどう整理するのか…」(前出・解説者)
野球協約では、外国人選手の一軍登録は4人。他球団を経由した選手でもなければ、キューバでもない、独自ルートで発掘してきた6人は、全員優秀である。だが、広島という球団は「無駄な出費」を嫌う。毎年、選手総年俸は20億円前後と決めたら、その枠内でおさめる努力もする。また、外国人選手の年俸は、決して安くない。したがって、他球団は「二軍に置いておくのなら、必要最低限(4人)に絞り込んで来るのではないか?」と見ているのだ。
「あくまでもこちらの予想ですが、ロサリオを最初から一軍で使うとするならば、バリントン、ミコライオ、キラ、エルドレッドの誰かを切らなければならない。ヒースを使うのなら、バリントン、ミコライオ、フィリップスの3投手を天秤にかけることになる」(前出・関係者)
“使い回し”では、最優良ルートは広島というわけか。
今季だけで判断するのは難しいが、キューバ選手は食事、移動手段などでも戸惑いを見せていた。中日ドラゴンズはドミニカ共和国に強いネットワークを持っており、「独自ルートを開拓した点は見倣うべき」とし、キューバ政府とは距離を置いて付き合おうとしている球団もあった。
しかし、デスパイネの入団会見時、ロッテの松本尚樹編成統括と林信平球団本部長はこう語っていた。
「代理人が介在する他国の選手とは違い、(獲得交渉と契約内容は)シンプルでクリーン」
契約金や年俸の一部は政府が徴収するが、選手もかなりの額を手にする。キューバ選手の来日は、外国人選手の年俸以外でお金をかけすぎた現状も見直すきっかけになったようだ。