「伊藤は巨人とのオープン戦2試合に登板し(3月9、10日)、計3イニングで8奪三振をマークしました。3月下旬、過労による右肩の違和感を訴え、支配下登録が見送られました。『巨人戦に強い』というのが決め手になったようです」(プロ野球解説者)
伊藤は2011年ドラフト4位で阪神に入団した。2年目のシーズンを終えた昨年オフ、『育成選手降格』を通告されたが、キャンプから4月8日の二軍戦までの対外試合20イニング強を投げ、無失点。「(キャンプから)僅か2カ月余で支配下選手に復帰したのだから、一度見限った首脳陣にも問題がある」(前出・同)の批判もないわけではない。それとも、伊藤が非情通告を発奮材料に変え、頑張ったと見るべきだろうか。
チーム内部に関する“憶測”はともかく、こんな指摘も聞かれた。緊急補強トレードである。
「伊藤は中継ぎで使う予定。先発投手の人材難という根本的な問題は解決されていない。どの球団も計算の立つ先発投手は(トレードに)出さないだろうし、かといって、今季は外国人投手を緊急補強するのは難しい。一軍登録できる外国人選手の枠は、メッセンジャー、呉昇桓、マートン、ゴメスで埋まっているので」(同)
だが、阪神の目の前には獲得可能な先発投手がちらついているという。オリックスの井川慶(34)だ。昨年12月、オリックス側から井川放出の情報が発信されていた。森脇浩司監督(53)は、昨季中から「チームを変えるには、トップ15人を変えなければいけない」と話してきた。そのチーム改革の一環が13年1月に成立した『大引、木佐貫−糸井、八木』の交換トレードであり、今季中にFA権を取得するエース・金子千尋(30)とも複数年契約を交わさなかった。
「今オフ、金子を引き止めないのかと聞かれれば、今の段階では何とも言えない。ただ、昨年オフに金子と複数年契約を交わさなかったことで、『チーム改革は本気なんだ』という緊張感が生まれました。井川は日本球界復帰後の2年間で(〜13年)5勝しか挙げていません。年俸も6000万円までダウンしており、阪神からすれば獲得しやすい選手になっている」(同)
井川の心中を察すれば、阪神復帰には抵抗があるのでは…。06年オフに米挑戦したが、そこに至るまでの契約交渉で「ポスティングシステムに掛ける、掛けない」でフロントと衝突している。とはいえ、日本球界の規約では選手はトレードを拒否できないことになっている。今季は先発で勝ち星を挙げるなど復調の兆しも見せつつあるが、オリックスは吉田一将、東明大貴など即戦力投手のドラフト指名に成功しており、仮に井川を放出したとしても痛手にはならない。また、オリックスはオフの戦力補強にも成功しており、阪神サイドに無理難題な交換要員は求めて来ないだろう。
成立可能なトレードのようだ。障害があるとすれば、阪神側のメンツかもしれない。