7年総額1億5500万ドル(約161億8700万円)の超大型契約で、年俸は6年目までが2200万ドル(約23億円)、7年目が2300万ドル(約24億円)とみられ、日本人としては史上最高額となった。特筆すべきは、4年目(17年シーズン)終了時、田中が望めば、契約を破棄しFAとなれる特記条項が盛り込まれた点だ。
これまでの日本人最高額はイチロー外野手が、マリナーズと08年から結んだ5年総額9000万ドル(現在のレートで約93億9300万円)、年平均1800万ドル(同約18億7900万円)だった。
旧ポスティングシステムで、07年に西武からレッドソックス入りした松坂大輔投手が6年総額5200万ドル(同54億2500万円)、12年に日本ハムからレンジャーズ入りしたダルビッシュ有投手が6年総額6000万ドル(同62億5900万円)で、田中の契約はまさに破格なものとなった。
なぜ、ここまで田中の年俸が高騰したのか? その理由は、ポスティングシステムの変更にあった。旧制度では入札金額に上限はなく、最高額で入札した球団が独占交渉権を得られた。松坂やダルビッシュは5000万ドル(同約52億1500万円)を超える金額で落札されたが、新制度では入札金額の上限は2000万ドルに抑えられ、最高額で獲得を希望したすべての球団との交渉が可能となった。
入札金額が抑えられたことで、多くの球団が獲得に名乗りを挙げることが可能になったが、競争となったことで、田中に提示される条件はドンドン跳ね上がっていったのだ。
ヤンキースではアレックス・ロドリゲス内野手(38)が薬物規定違反により、今季全試合の出場停止処分が下された。ロドリゲスの今季年俸は2500万ドル(約26億800万円)だったが、この処分のため、支払う年俸は280万ドル(約2億9200万円)となり、2220万ドル(約22億9500万円)の余剰資金が生まれた。それを、そっくりそのまま、田中の獲得資金にスライドさせることが可能となったのだ。
メジャーでの実績なしで、いきなり高年俸選手となった田中だが、懸念材料もある。チーム内での、年俸バランスだ。田中はエースのCCサバシア投手(33)、黒田博樹投手(38)に次ぐ3番手の先発投手として期待されている。
ところが、過去2度の最多勝を獲得し、通算205勝をマークしているサバシアでさえ、年俸は7年総額1億6100万ドル(約167億9200万円)で、田中とほぼ同額。12年に16勝を挙げるなど、4年連続2ケタ勝利中の黒田は1600万ドル(約16億6900万円)で、田中より、はるかに安いのである。野手では、チームの支柱でもあるデレク・ジーター内野手(39)が1200万ドル(約12億5200万円)にすぎず、チームメイトからのやっかみが気になるところ。
かつて、旧ポスティング制度を利用して、07年に阪神からヤンキース入りした井川慶投手(34=現オリックス)は、約2600万ドル(同27億1200万円)で落札され、5年総額2000万ドルで契約を結んだが、5年間でわずか2勝に終わり、地元メディア、ファンから酷評された。
田中がチームメイト、メディア、ファンを納得させるためには、実績を残すしかなさそうだ。最低でも15勝以上勝たないと、年俸とのバランスが釣り合わなくなりそうで、年俸が高い分、そのプレッシャーも相当なものになりそうだ。
(落合一郎)