同日、井川は今季4度目の先発。過去3度の登板では結果が出せず、これがラストチャンスともいえた。全盛期のスピードこそないが、巧みな投球術で、8回を3安打1失点で抑えた。7回表に自軍が逆転して、オリックスが3-1で勝利。6年ぶりの国内での勝ち星をつかみ取った。
井川は「なかなか向こう(米国)で結果が出なかったので、何とか日本で結果を出したいと思って頑張っていました。ふがいない投球が続いたので、正直ホッとしています」と安どの表情を浮かべた。
対戦相手の指揮官・星野仙一監督は、阪神時代の03年にともに優勝を味わった間柄。この年、井川は20勝を挙げて、星野監督の胴上げに大きく貢献。自己最高のシーズンとなった。かつての恩師の前での復活勝利に、井川は「星野監督には頑張っている姿を見せられた。岡田(彰布)監督にはチャンスをいただいた恩返しができた」と感慨深げ。
井川は06年オフ、ポスティングシステム(入札制度)を利用して、ヤンキースに入団。落札額は約2600万ドル(当時のレートで約30億円)、5年総額2000万ドルの大型契約を結んだ。しかし、1年目(07年)の4月に2勝をマークしただけで、それ以降、勝ち星を挙げることはできず。2年目(08年)はわずか2試合の登板しかなく、同年6月にマイナーに降格してからは、2度とメジャーのマウンドに立つことはなかった。5年間、米国で苦しい思いをした井川は、ニューヨークの地元メディアやファンから、「獲得は失敗だった」と酷評された。
オリックスに入団が決まってからも、「井川はもう日本でも通用しない」と陰口を叩かれることもあった。それを、自らのパフォーマンスで払しょくした。苦労の末に待っていた復活劇。この白星が大きなきっかけとなるはず。かつて、20勝を挙げた男が、どこまで輝きを取り戻せるか注目が集まる。
(落合一郎)