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菅官房長官が岸田派牙城・広島に差し向けた女刺客

 自民党では夏の参院選で岸田派(岸田文雄政調会長・49人)の牙城広島選挙区に菅義偉官房長官が新たに女性候補を擁立したことで、仁義なき広島戦争が勃発している。

 岸田派擁立候補は自民党現職で6期目を目指す岸田派最高顧問の溝手顕正氏。仮に溝手氏が落選となれば、岸田氏のポスト安倍への影響は甚大。菅氏のこれらの動向に党内では「菅の岸田潰しか」という憶測も飛び交い始めた。

 広島選挙区事情に詳しい自民党関係者が解説する。

 「広島選挙区は定数2で、長年、自民党と野党で分け合ってきた。自民党議席はここ10年、岸田派が独占している。また、広島での岸田派国会議員は6人もいることから、広島は岸田派の牙城、本丸といわれてきた。その中で溝手氏は自民党参院会長や国家公安委員長などを務めてきた党と派閥の重鎮。今回もその威光で楽勝と見られていたのです。ところが、ここに安倍首相と菅官房長官が2議席独占できるとして、新たに2人目の候補者を21年ぶりに立候補させたのです」

 過去の選挙を分析すれば、2016年参院選挙で自民党は岸田派の宮澤洋一氏が約56万8000票で約50%の得票率を獲得。もう1議席が現国民民主党(当時民進党)の柳田稔氏で得票数は約26万4000票。2013年は溝手氏の得票が約52万2000票、得票率約46%。もう1人の当選者が現国民民主党(当時の民主党)の森本真治氏で約19万4000票だった。

「2回の選挙の得票を見ただけでも自民当選者は、野党当選者にダブルスコアで勝っている。つまり、党本部が『広島は2人擁立で勝てる選挙区』という言い分は納得できる。しかし、地元の溝手陣営では不満と不安で一杯ですよ。というのも、自民票をきっちり2等分できるのか。場合によっては共倒れや、溝手氏だけが落選、自民女性候補が当選のケースもある。そのため岸田派が牛耳る県連本部(宮澤洋一県連会長)は一貫して2人擁立には異議を唱え、猛反発しているのです」(広島県議会議員)

 自民党広島県連は1998年参院選の悪夢を恐れているのだ。

 当時、自民党は亀井郁夫氏と奥原信也氏の2人を擁立し、2議席独占を狙った。亀井氏は亀井静香元建設相の兄。奥原氏は宏池会系で現在の岸田派の流れをくむ。

 郁夫氏は秘書軍団と亀井元建設相の人脈などをフル稼働。知名度を武器にドブ板選挙を徹底した。奥原氏は岸田氏、溝手氏らが全力で組織選を展開。野党の有力候補は柳田稔氏だった。

 結果はどうか。郁夫氏約34万4000票、柳田氏約29万票、奥原氏約28万票。奥原氏は1万票差で落選した。今度も僅差で溝手氏が敗れないという保証はどこにもないのだ。

 それにしても、地元の猛反発を押し切ってまで自民党本部はなぜ2人目を擁立するのか。

「自民2人目の新人候補は広島県議の河井案里氏。案里氏は安倍首相を支える派閥横断『きさらぎ会』の幹事長を務める河井克行・党総裁外交特別補佐の妻です。『きさらぎ会』は安倍首相を支える会だが、実は菅官房長官の隠れ派閥と見なされ、菅氏のコントロール下にあるといわれる。河井氏は首相にも覚えめでたいが、それ以上に菅氏の側近中の側近。案里氏は2009年広島県知事選に出馬し落選したが、約19万票を得ている。知名度があるうえ、美人。今回の擁立劇は菅氏と克行氏の阿吽の呼吸で、菅派勢力拡大の画策と見られているのです」(岸田派関係者)

 案里氏擁立に地元自民党関係者からは「女性票を割らせるため、だれか別の女性候補を擁立しろ」、「案里には自民票は1票も回すな」などの不穏な声も飛び交い始めている。危機感を抱いた案里氏サイドも、複数回にわたり首相官邸で菅氏と面会、強力支援を改めて要請したという。

 功を奏したのか、菅氏は案里氏ホームページへのツーショット写真掲載を容認、さらに6月2日に広島市内で開かれる案里氏のパーティーには、森山裕国対委員長や山口泰明組織運動本部長ら続々と党幹部を派遣。全面バックアップ体制を強化しているのだ。

「本番になれば、菅氏や小泉進次郎氏、場合によっては安倍首相自らが案里氏の応援に駆け付ける予定です。このメガトン級支援に対し、76歳の溝手氏へは高齢批判も加わり、勝負は混とんとする雲行きです」(官邸筋)

 ポスト安倍を狙う会長の岸田氏は2人目擁立をしぶしぶ承知したが、案里氏支援にはノータッチ。そんな中、岸田氏への逆風が強まりつつある。

「岸田派の古賀誠名誉会長がBS放送で『岸田氏がポスト安倍でなければいけない、ということはない』と発言したのです。暗に菅氏を首相候補に挙げ、派内外に衝撃を広げました。また、岸田氏は禅譲を期待するあまり安倍首相にすり寄ってきたが、ここにきて首相は菅人気に『すごいね』とニコニコ顔。首相が菅氏を“ポスト安倍に本気で考え始めた”ともっぱらです」(夕刊紙記者)

 牙城を菅氏に脅かされている岸田氏。最悪、案里氏当選、溝手氏落選などの事態となれば、岸田氏の求心力は地に落ち、ポスト安倍どころではない。

「岸田氏も予防線を張りつつある。5月14日には24人の勢力を持つ谷垣グループの逢沢一郎代表世話人ら幹部と会食し、急接近を図っていますよ」(同)

 広島は“菅軍”に下るのか。

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