戸塚ヨットスクールといっても、若い人はピンと来ないだろうが、40代以上の世代にとっては、同スクールの事件は鮮烈に記憶に残っているはずだ。
76年に設立された同スクールは現在、登校拒否、無気力、非行、家庭内暴力などの子供の異常行動は、脳の機能低下が原因とし、衰えた脳幹機能を回復させるために、ヨットやウインドサーフィンの訓練を行って問題児を更生させるという方針で運営。体罰を容認し、原則スパルタ教育だ。
しかし、79年から訓練生の死亡、行方不明事故が相次ぎ、大きな社会問題となった。戸塚校長、コーチは傷害致死罪で有罪となり、実刑を受けた。同スクールは83年に戸塚校長、ほとんどのコーチが逮捕されたため一時閉鎖されたが、86年に再開。戸塚校長は06年4月、静岡刑務所から出所し現場復帰。現在も同スクールは存続している。
戸塚校長の復帰後、06年10月にはスクールからいなくなった男性訓練生(25)が知多湾で水死体となって発見された。その後も、09年10月(死亡)、11年12月(重傷)、そして今回と訓練生が相次いで、寮から飛び降りる事故が頻発。知多署はいずれも、自殺(未遂)とみている。
あれだけの事故を起こしておきながら、いまだにスクールが続いていること自体が驚きだが、預ける親がいることも摩訶ふしぎ。同スクールに入校するには前金で入校金315万円(約1年)の他、生活費が毎月11万円、入校時預り金(健康診断、消耗品等の購入費)20万円が必要。つまりは1年間で467万円という膨大な費用がかかる。
親もどうしようもなくなって、やむに止まれず預けるのだろうが、こんなに事故が多いスクールに、高額の費用をかけてまで、なぜに預けるのか、親の心理とは分からぬものだ。
(蔵元英二)