これはいったいどういうことなのだろうか。金券ショップを覗いてみると、定価50円の年賀はがきが46、47円程度で販売されている。大量に年賀状を出す人や企業にとっては、郵便局で買うよりかなりお得だ。都内新橋にある金券ショップの店長に話を聞くと、「商売上、どのようなルートで持ち込まれたものかを聞くことはありません。ただ、数が半端ではないので、個人で買ったものが余ったからではないことは確かですね。封もそのままですから」と答が返ってきた。
取材を進めていくと、金券ショップに大量に年賀はがきを流している犯人は、販売元の郵便事業会社の社員であることが明らかになってきた。都内の郵便局で非正規のアルバイトで配達業務を担当するAさん(33)に事情を聞くことができた。
Aさんは「各社員に年賀はがきの販売ノルマが課せられます。正規社員には1000枚単位、人によってはノルマ1万枚というケースもあるようです。私は非正規のアルバイトなので、ノルマは少ないのですが、それでも500枚でした。断ると、労働契約の打ち切りや昇給見送りなどのプレッシャーをかけられますので、職を失わないために断りきれませんでした。500枚も出す相手もいませんから、当然自腹です。安い給料から2万5000円も身銭を切らされるのですから大変です」とホンネをもらした。
どうやら、ノルマ達成のため、やむなく年賀はがきを買い取った郵便事業会社の社員たちが、購入資金回収のため、金券ショップに売りに走ったようだ。なぜ、そこまでノルマがきついのか。ジャーナリストのA氏は「郵政民営化の影響でしょう。年賀はがきは郵便事業にとって、年間最大の増収チャンス。とはいえ、ご存知のように、年賀状を出す人は年々減っています。しかし、郵便事業は民営化で営利優先となったため、販売目標達成のために、社員へのノルマが厳しくなったわけです。この問題の諸悪の根源は郵政民営化です」と語った。
得をするのは郵便事業会社だけ。ノルマ達成のために無理やり買わされる社員は泣きを見る。買い取った年賀はがきが大量に売れ残った金券ショップにとっても、はた迷惑な話だ。100、200枚程度のノルマなら話は分かるが、1000枚単位、1万枚なんて、むちゃすぎる。
(蔵元英二)