西沢社長は、その理由を「事業者としての義務。経営が成り立たない状況で何もしないのは、株主代表訴訟の対象にもなる」としている。砕いていえば、このままでは経営が成り立たず、被災者への賠償金の支払いもできないというわけだ。相次ぐ各地の原発の停止により、代替する火力発電の燃料費が増加していることも要因。
契約電力50キロワット以上の大口の事業者の値上げについては、政府の認可は不要。該当する顧客は約24万社で販売電力量の約6割を占めるという。値上げ幅は個別交渉となるため、一律ではないが、東電では2割ほどの値上げを検討している。
一般家庭用については政府の認可が必要であるため、東電では来年2月か3月に申請し、それを政府が審査する。東電は早ければ来夏にも1割ほどの値上げをしたい意向だが、これには政府内で「まず自助努力が必要」との意見も多く、簡単には決まりそうにない。
そんななか、時節柄、聞き捨てならない話も聞こえてきた。それは東電社員へのボーナスだ。12月に支給された同社の一般職組合員平均のボーナスは37万4000円。これは給与の1カ月分。昨冬の84万4000円と比べれば、5割以上も減ってはいるが、「この状況で、なんで37万円もボーナスがもらえるのか?」との批判も多い。
会社はほぼ死に体で、被災者への賠償金の支払いも満足にできていないのに、ボーナスが出るなんて、考えられない話だ。一般の会社であれば、当然ボーナスなどゼロだろう。半減以下になったとはいえ、しっかりボーナスを支払った上で、値上げに向かうのでは到底国民の理解など得られない。
茨城県在住で中小企業に勤める会社員Aさん(48)は、「原発の風評被害で、会社の売上が激減し、冬のボーナスは東電の1カ月分どころか、スズメの涙しか出ませんでした。東電社員はちゃっかりボーナスもらって、その上、値上げなど許せませんね。値上げする前にボーナス返上すべき」と怒り爆発。
自分たちの身は切らずに、その分を国民に負担させようとする東電。値上げをする前にすべきことはヤマほどあるはず。それを履行もしないで、値上げなど許されないだろう。政府はいったい、どうジャッジするのだろうか?
(蔵元英二)