北海道日本ハムファイターズは“核になる内野手”がいない。二塁手・田中賢介をFAで失い、遊撃手の金子誠も今季、38歳になる。昨秋の日本シリーズでメスを入れた左ヒザを再び痛めており、開幕に間に合わない可能性もある。働き盛りの内野手・大引啓次(28)が欲しかったのは間違いないが、今回のトレードは「糸井を放出する目的」の方が強かったのではないだろうか。
日本ハムは余剰人員を持たない球団−−。
今さらだが、「アレは糸井放出を匂わせていたのでは?」と思える言動もある。投手と野手の二刀流に挑戦するドラフト1位ルーキー・大谷翔平(18=花巻東)が千葉県・鎌ヶ谷市の『勇翔寮』に入寮したときだった(9日)。大谷は記者団の要請に応え、囲み取材に応じている。
−−グラブはいくつ用意していますか?
「2つです。内野用と外野用の…」
外野用? 取材陣が「投手をやるときは、内野用と外野用のどちらを使うのか」を聞いた途端、球団職員が“時間オーバー”の取材切り上げを知らされた。
このときは聞き流してしまったが、この入寮日に至るまで、栗山英樹監督(51)を始めとする球団要人は「ピッチャーと遊撃手で」と、二刀流の内訳を伝えていた。
プロ野球投手で他ポジションのグラブを使う話は、聞いたことがない…。『投手用グラブ』は内野用、外野用とも形態が異なる。大きさ、硬さ、開き具合などは人それぞれだが、それは基本となる『投手用グラブ』があって、契約したスポーツメーカー担当者に「好み」を伝えて改造を加えていくのが一般的である。
大谷はプロ入りにあたって、グラブを新調したという。何故、投手用ではなく、外野用グラブを用意したのだろうか。ドラフト1位ルーキーならば、スポーツメーカーが『投手用グラブ』を改造してくれるのだが…。
日ハムが内々に外野守備の準備も伝えていたとすれば、糸井放出と同時に囁かれた『外野兼任説』と、“不可解なグラブ新調”は合致する。おそらく、ポスティングによるメジャー挑戦を表明した糸井との2013年オフの契約交渉はモメる。メジャー志望の大谷を口説き落としたことが、『糸井放出』を加速させたのではないだろうか。
「日本ハムには親会社の関係でJリーグ・セレッソ大阪の経営を知るフロント職員もいます。彼らは選手を育て上げ、海外の大型クラブに売るサッカーの経営スタイルを知っています」(他球団の職員)
日ハムは余剰人員を持たない球団とも言われている。近年、重複戦力は持たない少数精鋭のスタイルで優勝争いを繰り広げてきた。今回の糸井放出に驚き、批判的な地元ファンも少なくないそうだが、球団の展開としては、昨秋のドラフト会議後に描いていた『経営戦略』の一つにすぎないのかもしれない。