『木曜スペシャル』は「矢追純一のUFOシリーズ」や「謎の怪奇人間オリバー!」といったオカルト番組を得意としてきた特別番組枠で、「タネ明かし番組」もこれらと同じオカルト要素の強い一篇として制作された。
しかしながら、当時「マジックのタネ明かしをテレビで披露する」という企画は当時かなり斬新だったためか、「マジックのタネ教えます!」は一時的だが、放送中止の恐れがあったという。
1982年11月18日の朝日新聞には「マジックのタネ教えないで」という見出しで、マジシャンおよび奇術師が多数在籍する「日本奇術協会」が日本テレビにクレームを出し放送中止を申し入れた、という記事が掲載されている。
記事によると、日本奇術協会は日本テレビが「マジックのタネ教えます!」なる番組を企画していると知るや、再三に渡り「制作するな」と抗議。奇術協会いわく「そのまま放送されては奇術師の営業生命に関わる」「海外の奇術界に対しても信用を失ってしまう」と日本テレビへ訴えていたという。
もっとも、奇術協会内部にはこの「マジックのタネ教えます!」に協力的なマジシャンも複数人おり、王子光、引田天功(初代)は協会の忠告を無視し番組に全面協力。その結果、王子光は協会を除名され、引田天功は協会内で降格されるなどの内部のゴタゴタもあったという。
しかし、日本テレビは奇術協会の訴えに対し毅然とした態度で対応し、最終的には一切のVTRカットもなく番組を放送したという。
結果、「マジックのタネ教えます!」は高い視聴率を記録し、現在まで不定期で放送が続く日本テレビ系列の番組『真実解明バラエティー!トリックハンター』(2014年〜2016年)などのヒットシリーズへと続いていくことになる。
斬新な企画の影には人知れぬ苦労があるのだ……。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)