交流戦で2連敗した悪夢を払しょくするどころか、泥沼にはまってしまった。3連勝で一気に日本一に王手を狙った巨人だが、セ・リーグ最多勝右腕のグライシンガーに西武はやはり天敵だった。
初回、シリーズ初めて先制点を許すと、4回、6回と4番・中村剛也に2打席連続2点本塁打を被弾。5失点でKOされた。打撃陣も岸孝之を打ち崩せず敗れ去った。
試合後、背信投球をしたグライシンガーは「(中島は)当たって出塁することを選んだのに、なぜにらまれるのかわからない」とぶ然とした表情で球場を後にした。
グライシンガーが指摘するのは4回、先頭打者の中島のヒジに死球を与えた場面だ。中島からにらまれると、怒声を浴びせた。これに中島も反応し、ふたりは一触即発の距離まで近ずく。
直後、両軍の選手が集まり、乱闘寸前という状態になったが、西武の大久保博元打撃コーチらがなだめたことで最悪の事態は回避できた。
それでも、中島は「何か言ってたんで『ハァ?』という感じで見てたら、向こうが近寄ってきた。カーッとなった」。チームメートの栗山巧外野手から「一緒に打撃でやりかえしましょう」と促されて、闘志に火がつき次の打席で内野安打を放つ。しかし、両軍の間に“しこり”が残ったことは事実。
中島への死球は初めてではない。第1戦でエース上原浩治投手からも当てられている。
大久保コーチは「当てられりゃ、誰でもそうなるって」と起こるべくして起こったと言わんばかり。そればかりか「向こうはこれで(内角攻めが)やりづらくなったでしょ」と遠まわしに“けん制球”を投げ込んだ。
ピリピリした緊張感が漂い始めた日本シリーズ。危険な火種を抱えて後半戦に突入することになる。
○若獅子の活躍で快勝
第4戦は若獅子が文字通り、獅子奮迅の活躍を見せ快勝した。
この日、負ければ日本一に王手をかけられ後がなくなる西武。この大事なマウンドを託されたのはプロ2年目の岸孝之だった。
日本シリーズ初登板の岸は、伸びのある直球とカーブ、チェンジアップなど緩急を織り交ぜ、巨人の強力打線をわずか4安打、10奪三振で完封。2005年渡辺俊介(ロッテ)以来12人目となる初登板初完封、さらに1981年西本聖(巨人)以来2人目となる毎回奪三振の記録を達成した。
打撃陣も“おかわり君”中村が2日連続となる本塁打を放ち、4打点と大暴れ。シリーズで不振にあえいでいたパ・リーグ本塁打王がついに目覚めた。
完勝した渡辺久信監督は「2戦、3戦目と悪い流れだったんで、これで断ち切ってくれたと思います。(中村は)チームに勇気を与える2本だったし、(勢いに)これで乗っていける」とニンマリ。獅子が反撃の咆哮(ほうこう)をあげた。