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高級店・コンビニも相まみえる 激闘の喫茶業界

 日本生産性本部(公益財団法人)によるカフェ部門、2018年度第1回調査(年6回)で、首都圏中心に店舗展開するベローチェ(運営会社シャノワール=東京=172店)が「顧客満足度」でトップに輝いた。全国展開するスタバ(スターバックスジャパン=東京=1340店)やドトール(ドトールコーヒー=東京=1120店)などの大手カフェチェーンを押さえ、なぜベローチェはトップに輝けたのか。

 同調査には「顧客期待」「知覚品質」「知覚価値」「推奨意向」「顧客満足」「ロイヤリルティ」という6つの指標があるのだが、'18年度の第1回調査では、「顧客満足」「知覚価値」「ロイヤルティ」の3指標をベローチェ、「顧客期待」「知覚品質」「推奨意向」の3指標はスタバが1位になった。

 ベローチェとスタバで6指標を独占したが、そのなかでも注目度の高い「顧客満足度」に限ってはベローチェが抑えた形だ。その背景を経営アナリストがこう話す。

 「ベローチェが躍進できた大きな要因は、なんといってもコスパでしょう。ドトールのブレンドコーヒー(Mサイズ)の価格は270円(税込み)、スタバのドリップコーヒー(Tollサイズ)は345円(税込み)、ベローチェのブレンドコーヒー(Mサイズ)の価格はなんと200円(税込み)。低価格路線のドトールと比べても割安で、コスパはかなり高いです。コーヒーのクオリティーを維持しながらもリーズナブルな値段に抑えているため、ドトールやスタバを圧倒できたのではないでしょうか」

 高いコスパが認知され「顧客満足」では頭一つリードしたベローチェだが、安穏としてはいられない。その理由を業界通の経営コンサルタントはこう話す。

 「最近は、コンビニの低価格コーヒーが品質にこだわり、ますます美味しくなっています。さらにイートインコーナーもキレイで設備が充実してきていることから、廉価がウリのベローチェは、今後コンビニとも競争しなければなりません。さらに最近は高級喫茶店にも人気が集まっているため、それらの店舗との競争も熾烈になってくると思います」

 高級喫茶店の代表格として躍進しているのが、「喫茶室ルノアール」と「星乃珈琲店」の2店だ。

 ルノアールの運営会社「銀座ルノアール」のカフェ事業は、右肩上がりで成長しており、'18年3月期の売上高は59億円で、5年前と比べて23%増。最近はコーヒー焙煎、販売、小売りも手掛け創業から約100年続く老舗の「キーコーヒー」を傘下に入れたことで、さらに勢いを増している。

 一方、星乃珈琲店の運営はドトールの姉妹会社「ドトール・日レスホールディングス」。ドトールで低価格コーヒーを販売と同時に高級店ヒットをも察知した動きだ。4月発表の2018年2月期通期の連結決算は、売上高1311億8200万円(前期比3.4%増)、純利益66億7300万円(10.3%増)とこちらも売り上げを伸ばしている。こうした高級喫茶店が躍進する要因を前述の経営コンサルタントがこう分析する。

 「品質と味を重視したコーヒーを提供している面もありますが、ベローチェを含むスタバやドトールなどのチェーン店がセルフカフェなのに対して、高級喫茶店ではスタッフが世話をやくフルサービス。そして高級感漂うソファと、広々とした座席でゆっくりくつろげる。コーヒー一杯で600円以上かかりますが、それ以上に居心地の良さが抜群です。特に読書家やノマドワーカー(オフィスや自宅ではなく、IT機器を駆使して場所にとらわれずどこでも仕事する人)たちからは人気を得ています」

 現在の喫茶業界は、低価格と高級志向が加速し2極化が進んでいるようだ。しかも、価格にとらわれない新たな勢力も無視することはできない。

 「日本の喫茶店の歴史は1970年代、ブルマンなど銘柄にこだわる純喫茶全盛のファーストウェーブから始まり、2000年に入るとスタバなどシアトル系カフチェーンが台頭したセカンドウェーブが到来しました。そして現在は、コーヒー豆の農園にまでこだわり、ハンドドリップで丁寧に淹れた高品質コーヒーを提供するカフェが注目されているサードウェーブ時代です。アメリカオークランドに本社があり2015年に日本に上陸したブルーボトルコーヒーは、行列のできるカフェとして話題をさらったのは記憶に新しいでしょう」(業界歴の長いバリスタ)

 2012年の喫茶業界の市場規模は1兆200億円だったのに対して、2016年は1兆1170億円。不景気な外食産業のなかでも、順調に業績を伸ばしているが、コンビニコーヒーや高級喫茶店の急伸、さらにサードウェーブ時代に突入した喫茶業界は、熾烈さが増すばかりだ。

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