現実の話として、筆者は知人の女性から奇妙な相談を受けた事がある。
「毎日、帰る時間が違うんです。ですが、家に帰ると同時に電話が鳴るんです」
見ているのだ。都会の雑踏の中で、貴方をじっと見ている奴がいるのかもしれない。
ある女性の体験である。女性が職場から帰ると、郵便受けに自分宛の封筒が入っていた。しかも、やけに重い。
(なんなの、これ〜)
女性は訝しげに封筒を持ち上げ、部屋に持ち帰った。着替えると女性は、その封筒を開封し中身を確認した。写真である。しかも、数十枚…。全部、ぜんぶ、写っているのは わたし…。
「いや〜、なんなの〜これ」
女性は悲鳴をあげると、写真の束を放り投げた。写真はここ2.3年の女性の姿を捕らえた写真であった。
旅行中の彼女
職場での彼女
その写真には、あらゆる彼女が写っていた。
(監視されている)
ストーカーによる盗撮と判断した彼女は近所の警察に相談した。彼女の相談に対し、警察は非常に好意的であった。現場検証や時々パトロールにも来てくれた。
ある時、担当の警察官が自宅を訪問した。
「大丈夫です。犯人は本日捕まりました」
警察官はにっこり笑ってそう述べた。彼女は礼を述べると、警察官は満足げに立ち去った。
警察官をマンション1Fまで見送った彼女が、ふと郵便受けを見ると、何やら封筒が入っている。
(何かかしら?)
彼女が恐る恐る開封すると、そこには彼女の写真が数十枚入っていた。
現場検証中の彼女
被害を相談中の彼女
彼女は声にならない悲鳴をあげると、写真を放り投げた。
(山口敏太郎事務所)