今年2016年は夏から秋にかけて日本に多くの台風が上陸し洪水や荒波などの被害が報告されている。
台風被害の際、最も影響を受けやすいのが交通機関であり台風時の外出は古来より人類の悩みの種だった。人類は雨風をしのげる交通機関として陸路であれば電車や自動車を開発し、水辺であれば船やフェリー、空であれば航空機などを開発してきたが、洪水などでも影響を受けない「水陸両用」の機体はいまだ開発こそされていないものの、20世紀はじめから人類が果敢に挑戦してきたジャンルでもある。
今回ご紹介している写真は1932年にフランスで開発されたという水陸両用自転車「Cyclomer」の写真である。
前方および後方に丸いボンベのようなものがくくりつけられ、車輪も厚みのある巨大なホイールが採用されている。車輪とボンベは浮き輪の役割を果たしており、池や湖などでは両脇のボンベを地面側に下げることにより水面に浮くことができるという。
当時、この水陸両用自転車の発明は画期的で新聞にも紹介されているが、水面に浮かんだ様子はイラストで起こされており、実際に水辺に浮かんだかどうかは不明である。
また、仮に浮かんだとしても全体的に重量がかさみ水辺および陸路で通常の自転車並みの馬力が出たかは非常に怪しく、恐らくはどちらも中途半端なスピードしか出なかったものと推測される。
2016年現在、水陸両用車は市販されてはいないが個人レベルでは製作は完成しており、また救急車や消防車など緊急災害用の自動車には水陸両用とまではいかないが、車輪が地面に付着している間は車体の半分以上が水没していても走ることができる防水機能が付け加えられており、また洪水時にはボートのように水面に浮かぶことのできる自動車も開発が進んでいる。
水陸両用車が我々の手に届くのはまだ先かもしれないが、研究は着実に進んでおり期待されている。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所