今シーズンの活躍が認められ、NPBから2018シーズンにおけるカムバック賞が贈られたのだ。
「ケガや不振を乗り越えて再び結果を残した選手」に贈られるこのタイトル。今季の松坂は、その資格を満たすに十分な結果を残したと言えるだろう。
■復活を果たした2018シーズン
松坂は今季から中日ドラゴンズの一員となり、春先から先発要員として11試合に登板。6勝4敗、防御率3.74の数字を残している。投球回数は最長で7回(4月19日、対阪神、ナゴヤドーム)、シーズントータルでも55回1/3だったものの、ガルシアの13勝に次ぐ勝ち星を挙げ、5位に沈んだチームの中でベテランとしての存在感を見事に発揮。オールスターにも12年ぶりに出場し大いに話題を呼んだ。
何より先発のマウンドに立つ松坂の姿が見ることができたのは、ファンにとって喜ばしいことだった。
特にベテランと呼ばれるほどキャリアを重ねると、起用方法が変わってくるのが普通。投手であればなおさらだ。NPB復帰後もケガに悩まされ、中日ドラゴンズに移籍して1年目の松坂。復活を遂げた場所はやはり先発のマウンドだった。
そして来季も同じようにその姿を見せてくれれば、プロ野球ファンにとっては至福の時間となることは間違いないだろう。
■来季、そしてその先へと膨らむ期待
松坂の復活とは対照的に、同世代の「松坂世代」は相次ぎ、今季限りで球界を去ることとなった。長年、ケガに苦しんだ杉内俊哉、独立リーグからNPB復帰を目指した村田修一、学生時代から同じユニフォームを着て戦った後藤武敏…。さらには海の向こうでは、松坂と数えきれないほどの名勝負を残したイチローも今季、古巣マリナーズで開幕スタメンを勝ち取ったものの、その後、純粋なプレイヤーとしての立場からは離れている。
そして言うまでもなく松坂自身の現役生活もそう長くはないはずだ。トップアスリートが生き続ける世界の時間の流れには、松坂でさえもあらがうことはできない。
その中でも来季から指揮を執るドラゴンズの与田剛新監督は、松坂を中6日で起用する方針。西武でともに戦ってきた伊東勤氏もコーチに就任した。また、本人も「強い思い入れがある」と語っていた背番号も『18』に変更するとすでに発表されている。来季へ向け、ローテーションピッチャーの1人として、さらに良いパフォーマンスが求められていることの表れだろう。同時にわれわれの期待はふくらみ続けている。
ワールドベースボールクラシック(WBC)で世界一に輝き、レッドソックス時代にはチャンピオンズリングも手にした松坂。ただ、「平成の怪物」と呼ばれた男にはまだやり残していることがある。
いまだたどり着いていない日本一。さらには日の丸を背負って戦う五輪での金メダル。多くの夢をファンに与え続けている松坂は愛着のあるエースナンバーを背負い、2019年、さらにはその先もマウンドに立ち続ける。(佐藤文孝)