森繁和監督(63)が前半戦終了の中間報告を行ったのは、7月18日。「オールスターゲーム・ブレイク」の期間ではなく、すでに後半戦が始まってからとなった。関係者によれば、「白井文吾オーナーの日程が合わなかったため」とのことで他意はないようだが、ペナントレースが再開していただけに、そこで出た補強の話にはリアリティーが感じられた。
「翌19日、西武球団が中日の左腕、小川龍也との金銭トレードが成立したことを発表しました。森監督は地元ラジオ局の取材で『近く、ある中日投手がいなくなる』と公言していました。ビッグネームの交換トレードが噂されていただけに小粒な感は否めませんが、公約通りとなりました。中間報告のなかで、森監督は小川の放出も報告していたと思われます」(地元メディアの一人)
中間報告は、2時間という異例の長さとなった。着目すべき点が2つある。まず、白井オーナーが来季の森監督の続投を明言したこと。そして、近日中に新外国人選手を獲得し、巻き返しに出るというのだ。
「中日は松坂大輔を獲得し、復活させたことで観客動員数もアップしました。フロント、経営陣の大半は松坂獲得に反対でしたが、それを説得したのが森監督。“森監督サマサマ”ですよ」(関係者)
白井オーナーは中間報告後、記者団の取材に応じ、こうも話していた。
「いい選手をドミニカ(共和国)から連れてくる準備を進めている。20代、聞いたことも見たこともない選手だが、森監督が見て『いける』と言うんだから、期待が持てる」
そばにいた西山和夫・球団代表が慌ててしまった。当たり前の話だが、補強の話は成立するまで伏せておくものだ。森監督はオフになると、中南米のウインターリーグを直接視察している。前出の関係者によれば、「数年前から森監督が見込んでいた」とのことで、オリオールズ3Aに在籍する左腕投手、ジョエリー・ロドリゲスのようだ。
メジャーリーグ選手名鑑(廣済堂出版)などによれば、ロドリゲスは17−18年シーズン、ドミニカでのウインターリーグで17試合に登板し、防御率は0・82。パワータイプの速球派と紹介されていた。しかし、今季3Aでは33試合に投げて、防御率4・56と平凡な成績だった(同時点)。
「森監督は改めて今季の3Aの成績を見て、いけると確信しました。防御率4点台?いや、森監督が着目したのは、イニング数と奪三振数です。49回3分の1を投げ、奪三振数は52。イニング数を上回る三振数です」(前出・関係者)
ロドリゲス獲得に向け、支配下登録選手数の「空き」を作るため、小川の放出トレードでは交換要員を求めなかったというわけか…。
在京セ・リーグ球団のスタッフに聞いてみた。
「森監督は外国人選手を見極める眼力があります。外国人選手はアタリ、ハズレが激しいので、シーズン途中の補強において、日本球界を経験していない外国人選手に照準を合わせるのは怖い。森監督でなければできない補強です。新外国人選手の対策、分析を行っているうちにシーズンが終わってしまうかもしれない。そういう意味ではブキミです」
小川を放出したことで、中日救援陣の左腕は、岩瀬と岡田だけになった。そこに奪三振率の高い新外国人投手が入るのは大きなプラスとなりそうだが、中日も首位広島を叩かなければペナントレースは終わってしまう。目下、中日が一軍登録している外国人選手は、ガルシア、ビシエド、アルモンテ、モヤの4人。今さらだが、一軍戦には4人の外国人選手しか登録できない。主に代打で出場するモヤが新外国人左腕と入れ代わるようだが、こんな声も聞かれた。
「モヤは広島戦で打つんですよね。広島投手陣もモヤを嫌がっています」(プロ野球解説者)
対広島は8勝7敗。広島に勝ち越している唯一のセ球団でもある。後半戦、森監督が巨人、阪神を苦しめるだけに終わったら、「松坂効果で続投を勝ち取った」と揶揄されてしまうだろう。(スポーツライター・飯山満)