内藤哲也からIWGPインターコンチネンタル王座を奪取したクリス・ジェリコは試合後、IWGPチャンピオンに長年抱いてきた思いをこのように表現した。
11,832人(札止め)の大観衆が集まった新日本プロレス6.9『DOMINION』大阪城ホール大会。内藤哲也にクリス・ジェリコが挑戦するIWGPインターコンチネンタル選手権試合はダブルメインイベントの第1試合に組まれた。
ジェリコは、入場した内藤を後ろから急襲。試合開始のゴングが鳴らないまま場外乱闘を繰り広げ、ゴングが鳴ってからも内藤はしばらくコスチュームを脱ぐことができなかった。この日のジェリコは、目に十字線のようなペインティングを施していた。1.4東京ドーム大会でのケニー・オメガ戦同様、WWEで見せているような華やかさを封印。破天荒なヒールファイトに徹しているように見えた。
「メッセージを聞いて安心したことは、彼がインターコンチネンタル王座にちょっとでも興味があるっていうことかな?彼の興味が内藤哲也にあるのなら、別にタイトルを懸ける必要はないと思っていたけど、彼の口からインターコンチネンタル王座がなんちゃらかんちゃらって出てきたんでね。タイトルマッチにする意味、タイトルマッチとして(試合を)行う意味があるんだなと。ほしいと言うから懸けようよ」
度重なる自撮りのビデオメッセージの中で、ジェリコは「IWGP」と「インターコンチネンタル」というワードを何度も出してきた。最初はタイトルマッチを拒んでいた内藤の気持ちも変化していったようだ。
試合後、ジェリコからはレスラー内藤を称賛するコメントも見られた。ジェリコにとって1月に“餌”をまいた内藤が、その後IWGPブランドのタイトルを奪取するとにらんだのは読みが鋭かった。
今思えばケニーとの試合にIWGP USヘビー級王座の権利が懸かっていたのもジェリコにとって大きなことだったように思える。FMW、そしてWARと日本の団体で育ってきたジェリコだが、WAR時代やアメリカWCWに移籍した後に新日本勢と対戦しながらも、長いキャリアの中でIWGPタイトルは一度も戴冠したことがなかったのだ。よって今回のタイトル奪取は、26年越しの“ジャパニーズドリーム”が叶った形になる。
ジェリコは「これから、明日、フロリダ・タンパに帰るためのファーストクラスの航空券をもう1枚購入する。俺の隣の席だ。その席にこのベルトを座らせる。それほど大事なものだ」とまで言い切った。入場時にベルトを花道に置き去りにした内藤は、IWGPヘビー級王座だけに価値があると思っている選手だ。レフェリーを突き飛ばしてから急所蹴りを放ち、コードブレイカーというフィニッシュはタイトルマッチの結末として決して褒められることではないが、このベルトに全く興味がない内藤と、IWGPブランドのタイトルを自身のキャリアに刻みたいジェリコの思い、価値観の差が結果に現れたのだろう。
WWEの同王座も含めて10度目のインターコンチネンタル王座を戴冠したジェリコの手によって、白いベルトが久々に海を渡ることになった。
取材・文 / どら増田
写真 / 舩橋諄