アームサポーターを白に新調したことも相まって、先月のオカダ戦で見たときよりも、棚橋の上半身はさらにパンプアップされていた。先シリーズはジュニアヘビー級の大会が多く、イギリス遠征もあり、棚橋はシリーズ最終戦のみの出場だった。ただ5.4福岡国際センター大会で、最強王者と言っても過言ではないオカダをあと一歩まで追いつめていた。肉体のケアに充てた2月と比べてグングン状態を上げているのは、あの肉体を見れば明らかだった。
トーア・ヘナーレとタッグを組んだこの日の試合では高橋裕二郎&マーティー・スカルのバレットクラブを相手に敗れてしまったが、本来のキレが戻ってきていると思う。コンディションはここ数年でベストなのではないだろうか。ただ、IWGPヘビー級王座奪還に失敗した後に新たなテーマを見つけるのは、棚橋クラスの選手になると至難の業だ。6.9大阪城ホール大会ではどんなカードが用意されているのか、予想がつかなかった。
しかし、この日の試合後、その不安は杞憂に終わった。裕二郎とスカルはヘナーレにストンピングを連発し、棚橋がエルボーで裕二郎を食い止めるが、スカルは棚橋にカサ攻撃を仕掛けた。そしてチキンウィングフェイスロックで棚橋を絞め上げると、放送席の獣神サンダー・ライガーが乱入。これを見たスカルと裕二郎は慌ててリングから退散した。
会場から大きな「ライガーコール」が注がれる中、棚橋を救ったライガーはマイクを握ると「この『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』、試合がなくてイライラしてんだよ!レイ・ミステリオJr.、連れてこい?連れてきてやろうじゃねえか!なんなら棚橋選手、俺、ミステリオ、3人。オマエも誰でも連れてこいや!」と衝撃発言。『怒りの獣神』が大音量で鳴り響いた。
共闘することに合意したライガーと棚橋は筋肉ポーズを見せ、バレットクラブを挑発しながらアピールした。ライガーは棚橋の腕を上げ、ライガーは実況席に、棚橋は控室にそれぞれ戻った。
「どうやら、新しい闘いの腕に身を任せられた。イギリス遠征を経て、久しぶりに新日本プロレスのリングに戻ってきたけど、まだ何も見せられてないから。次だね。大阪、見てろよ」
棚橋は意気揚々としていた。棚橋、ライガー、レイ・ミステリオJr.のトリオには、夢と華がある。翌日、新日本プロレスはCody&ハングマン・ペイジ&スカルのバレットクラブCody派を対戦相手とすることを発表した。ミステリオとCodyのWWE的な絡みや、棚橋とCodyの絡みにも注目したい。
おそらくこのカードを一番喜んでいるのはライガーだろう。棚橋にとってもいい機会だろう。昨年の大阪城大会では内藤哲也をテキサス・クローバー・ホールドで葬り、IWGPインターコンチネンタル王座を奪還しており、相性もいい。次のチャンスである『G1クライマックス』に向けて、レジェンドたちに埋もれることなく、しっかりとアピールしておきたいところ。
復帰直後に見られた不安が払拭されつつある。棚橋弘至は負けても負けても諦めず、進化を続けている。大阪城では明るく、楽しく、華のある試合を見せてもらいたい。
【どら増田のプロレス・格闘技aID vol.12】
写真 / 舩橋諄