「どの球団もシーズン途中のトレードはできるだけ、避けようという雰囲気になっています。家族のいる選手であれば、引っ越しになる可能性もあり、(選手が)単身赴任になるとしても、家族に及ぼす影響も大きいので」(在京球団スタッフ)
たしかに、昨季は交換トレードが2件、譲渡トレードが1件だけ。一昨年は2対2の複数トレードが一件まとまっただけだった。球団にとってプラスになり、対象選手も出場機会が増えるのなら、トレードは決して悪いことではない。しかし、今回のトレードは“大激震の予兆”とも見られている。
まず日本ハムだが、今オフは編成スタッフを増員しても、年内に来季の選手構成を決められない可能性もある。長く投手陣を牽引してきた捕手の大野奨太(30)がFA権を取得した。ほかにも、クローザー・増井浩俊(33)、左腕・宮西尚生(32)、谷元圭介投手(32)もFA権を持っており、大谷翔平(23)のポスティングシステムによる米球界挑戦も“既定路線”のように捉えられている。
「主砲の中田翔(28)もどうなるか分かりません。順調に行けば、今季終盤に国内FA権を取得します。昨年オフの契約更改では辛うじてチームトップの座を守りましたが、代打を送られるなど屈辱的な交代も味わっています」(プロ野球解説者)
日本ハム球団はFA権を行使した選手を引き止めようとしない。これは球団の方針である。高額年俸のベテランを放出し、ドラフト指名した選手を20代半ばでピークに持っていくビジョンだ。
今回の黒羽根獲得は「大野退団」を前提としたトレードで、プロ4年目の石川亮、同じく3年目の清水優心、高卒ルーキーの郡拓也らが一人前になるまでの“繋ぎ”とも解釈されている。
「いや、黒羽根にとっては、今回のトレードはむしろ良い話だと思います。ラミレス監督は『正捕手は戸柱』と見ており、このままDeNAに残っても、試合に出るチャンスは限られていた」(前出・同)
交流戦明けには外国人選手のヤディル・ドレイク外野手(27)も獲得した。右の大砲タイプ…。中田がFA権を行使した場合に備えたのだろうか。
「巨人も日本ハムのFA選手を注視しているようです。谷元、増井が権利行使するのなら、弱点である救援陣を確実に補えますから」(球界関係者)
また、ドレイク獲得には別の意味合いも含まれていた。日本ハムの所属外国人選手数は「5人」になった。一軍登録できる助っ人は4人までで、余剰人員を持たない球団方針もある。当然、他球団もそれは知っている。ドレイクの入団会見は「エスコバーを出す」のシグナルとなり、興味を示してきたのはDeNAだけではなかったという。
「Aクラス浮上の見通しが立たないと判断されれば、FA予備軍を放出してしまうのではないか? 生きのいい若手を交換要員に求めて」(前出・同)
そう予想する声も聞かれた。
トレード期限は7月末まで。FA取得選手を多く抱える日本ハムが「シーズン途中のトレード回避」の不文律を破ってくるかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)