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王と長嶋〜プロ野球を国民スポーツにした2人の功労者〜 世界外交の切り札になる野球特別大使の肩書

 ともに巨人監督を解任された後に結成された「ON連合」の面々が望んだように、ONは監督に復帰した。長嶋さんが巨人監督に復帰、王さんはダイエー、ソフトバンク監督を務め、現在はそれぞれ巨人専務取締役・終身名誉監督、ソフトバンク球団会長の要職に就いている。その間に長嶋アテネ五輪日本代表監督、王WBC日本代表監督という重要ポストを経験している。

 長嶋アテネ五輪日本代表監督が「For・the・Flag」(日の丸の下に)、王WBC日本代表監督は「世界一への挑戦」をスローガンにしている。ミスター・ジャイアンツ、ミスター・プロ野球と呼ばれたN、世界の王といわれたOらしい言葉だろう。内政の長嶋に対し、外交の王。今後の2人の生き方を象徴しているスローガンと言っていいだろう。
 第1回のWBC日本代表監督として奇跡の世界一を達成した王さんは、今回の巨人・原監督率いるサムライジャパンではコミッショナー特別顧問、日本代表監督相談役として後方支援に徹し、連覇に貢献している。「今回だけでなく、王さんには2013年のWBCでも特別顧問をしていただきたい」と加藤良三コミッショナーが明言しているのも当然だろう。背広の世界の王がGM的な存在でいるだけで、次回誰が日本代表監督になるにせよ、これ以上心強い味方はいないからだ。原監督が凱旋帰国の記者会見の席上、思わず「イチロー氏」と言ってしまった、特別な存在だったマリナーズ・イチローさえ王さんに対しては最敬礼で従順を誓っている。

 王さんには外務省から委託された「野球特別大使」というポストもある。「野球特別大使といっても、特別なことをやるわけではない」と王さんは言う。が、世界を飛び回り、野球外交をするのに、国から認められた野球特別大使というポストは何かと効果を発揮するだろう。
 そもそもこの肩書の実現へ、王人脈の球界関係者が加藤コミッショナーと相談しながら陰で動いていた事実がある。「長い間、駐米大使を務め、メジャーリーグにもパイプのある加藤コミッショナーと、親交のある世界の王が合体すれば、野球の国際化の時代に対応するには、最高のコンビになるだろう。しかも、王さんが政府公認の野球全権大使というようなポストに就けば、世界相手の野球外交には最高の切り札になるだろう。一私人でなく、公人として動けば影響力も違ってくる」。こういう思惑があったからだ。長嶋さんが巨人監督を解任された後に充電生活に入り、キューバ、中国など精力的な野球外交を展開したが、その際に効果的だったのは、政界ルートのチャンネルだった。「実は外務大臣などと親交があったので、キューバや中国へ行くときなど、大いに助かった」と当時、長嶋さんは語っていたものだ。
 王さんの場合は、外務省から委託された公の野球特別大使なのだから、今後の世界外交に何かと効果的な肩書になってくるのは間違いない。リハビリに懸命に取り組み、奇跡的な回復ぶりを見せている長嶋さんだが、世界中を飛び回るのはまだ無理で、日本球界内で存在感を示すことになる。

 日本代表監督としてWBC連覇を達成した巨人・原監督に対し、「たいしたものだ。ONに近づいてきた」と太鼓判を押した。長嶋さんのお褒めのひと言は、原監督にとって何よりもうれしいものだったろう。昨年の宮崎キャンプでは、成長株の2年目の坂本を絶賛して、激励した。その言葉通り、坂本は遊撃に定着している。巨人の選手だけでなく、広島の4番・栗原、西武の3番・中島も長嶋さんのお眼鏡にかない、看板選手になった。

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