一体、今までどれほどの人間からこの質問を浴びせられてきたことだろう。その度に僕は必至に彼女の魅力を説明してきた。だが特徴のあるルックスや彼女に対する漠然としたイメージを持つ者と、前田敦子を深く知る者の温度差を埋めるのは非常に難しい。やはり多くの人が思っているのは、なぜ彼女は国民的アイドルグループ・AKB48のセンターになれたのかということなのだ。
そもそも彼女は全体曲においては、最初からずっとAKB48のセンターというわけではない。AKB48結成当初、その頃はまだアイドルとファンとの距離は近く、ステージで未完成なライブをする少女達に向かって、アドバイスするヲタの光景が珍しくなかった。それを受け、ほとんどのメンバーがヲタの“もっとこうした方がいい”というパフォーマンスに関する助言に耳を傾け、向上を図る。それは会いにいけるアイドルというコンセプトから生まれた育成シュミレーションのような感覚でヲタを夢中にさせた。しかしそんな中、前田敦子だけは違ったのである。まともに人の顔も見れず、トークはボソボソと話し、声も小さい。どれだけファンがアドバイスしても、わかっているのかわかっていないのか、落ち着かないリアクションを見せるばかり。だがそれが逆にヲタの心を惹きつけ、いつしかそんな前田から目を離せなくなっていった。自分が彼女を支えなきゃという気持ちこそがアイドルを応援する者の原動力であったのかもしれない。それを前田敦子は、AKBにおける熾烈な競争社会という構造の中で無意識に体現していた。だからこそ彼女はAKB48でトップになれたのだ。
そんな放っておけない女・前田敦子だが、どんな口説き文句も言い放っても、ボーっとしたままスルーされる可能性が高い。ならばとりあえず催眠状態に導いてから、こちらの言葉を伝えるのがいいだろう。そのためにはまず、前田敦子に会ったら彼女の両手の指を組み、人差し指だけを伸ばしてもらう。次は右と左の人差し指の間隔を広げた後、「くっつきま〜す」と落ち着いた声で連呼。すると本当に指がくっついていくはずだ。実はこれ、組んだ状態で指を離した時に起こる体の自然現象なのだが、このことを知らない人達は、こちら側の言葉で体が誘導されたと勘違いしてしまう。催眠においてはこの脳のスイッチをどう切り替えるかが特に重要なのだ。
以上の方法で相手の脳のスイッチを切り替えることができたら催眠チャンス。「眠くな〜る。眠くな〜る。5分後、あなたの前に高校球児が現れま〜す」と告げる。あとは自分だけ裏へ行き、球児のようにバリカンで頭を剃ろう。そして全裸になり、全身に瞬間接着剤を塗り付ける。あとは前田敦子の前へ行き、こう叫んでみよう。
「あっちゃ〜〜ん、泣かせてください! 泣かせてください!」
そういって甲子園で負けた高校球児のフリをして前田敦子の胸に飛び込み号泣するのだ。あっちゃんは催眠状態のため、目の前に全裸男がハグをしてきても、高校球児としか思わない。「がんばったね〜!」といって坊主頭をジョリジョリ撫でながら慰めてくれるはず。もしも何かのきっかけで催眠が溶けても大丈夫である。すでに全身に塗り付けた接着剤が彼女の肉体と引っ付いている。まさに一心同体。2人はハグをしたまま、永遠に結ばれちゃうのだ。さあ明日からみんなも試してみよう!
※この文章はイメージです。良い子は絶対真似しないで下さい。
(文・柴田慕伊)