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巨人の優勝を阻むのは「捨てられた選手」? 他球団で成長した“因縁深い若手”はFA補強の代償か

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 目の前で、胴上げは見たくない。その一心からだろう。下位チームの最後の抵抗が、巨人の優勝決定の瞬間を遅らせている。

 9月20日、巨人対2位・DeNA(横浜スタジアム)。DeNAの先発投手が平良拳太郎(24)と知らされた瞬間、巨人関係者は複雑な表情を浮かべていた。

 「同日、巨人の先発は山口俊。山口が16−17年オフ、FAで巨人に移籍し、その人的補償でDeNAに一本釣りされたのが平良でした。山口と平良の投げ合い、FA選手と補償選手が先発でぶつかるのは初めて」(プロ野球解説者)

 「平良の先発」に巨人サイドが複雑な表情を浮かべたのは、“過去の過ち”があるからだ。

 平良は沖縄県・今帰仁村の出身。人口約9200人の小さな村で、地元の公立校に進んでからは「すごいピッチャーがいる」と評判になっていた。当然、沖縄担当の12球団スカウトは視察に訪れたが、「対戦した学校も強豪校ではないので評価が難しい」とし、育成枠での指名が検討されていた。

 ところが、巨人だけは違った。平良の最後の登板を現地視察できたのである。

 「夏の甲子園予選でした。『初戦は突破するだろう』と思って、どの球団も他の選手を観に行ったんです。巨人はスカウトの人数も多いので、平良の投げる試合にも人を回せたのでしょうが」(在阪球団スタッフ)

 “単独視察”の結果、巨人は育成ではなく、正規指名に繰り上げた。「他球団を出し抜いた」と喜んでいたのだが(13年ドラフト)、山口俊のFA獲得でDeNAに引き抜かれてしまった。当時を知るスカウトたち、巨人二軍時代の彼を知るチーム関係者は「平良の成長」に複雑な心境だ。

 9月20、21日のDeNA2連戦での優勝を逃した場合、次カードはヤクルト戦だ。ヤクルトにも“因縁深い若手”がいる。

 「14−15年オフ、ヤクルトからFAで巨人入りしたのが相川亮二(現コーチ)。その人的補償でヤクルトに引き抜かれたのが、内野手の奥村展征。ドラフト候補だった13年、他球団の評価も高く、巨人は指名順位を繰り上げて獲得しました」(球界関係者)

 “巨人一年生”だった14年、奥村は二軍戦86試合に出場した。高卒野手で1年目からこれだけ多くのチャンスをもらえたのは、期待されていた証拠でもある。

 フリーエージェントも戦力補強の正当な手段だが、その代償で喪失した若手もいる。

 平良、奥村を指名した13年ドラフトだが、巨人は1位・小林誠司、2位・和田恋(現楽天)、3位・田口麗斗、4位・奥村、5位・平良の5人を指名した。巨人在籍は2人になったが、全員、一軍戦力になっている。今季途中、和田が楽天から請われて移籍したことも重ねて考えると、今年の優勝まで「育成」という道程を歩むべきだったと思うが…。(スポーツライター・飯山満)

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