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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★年金の未来をどうするのか

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提供:週刊実話

 G20が閉幕して、政治は参議院選モードに入った。ただ、国民の大きな関心事である公的年金の未来については、十分な政策論争が行われていない。

 与党の政策は、明確だ。全世代型社会保障の旗印のもと、働ける限り働き続ける社会の実現である。実際に成長戦略の実行計画では、70歳まで就業機会を確保する方策について労使で話し合いをするよう求めている。つまり、事実上、年金支給開始年齢を70歳に繰り延べることで、年金制度を守ろうというのだ。

 一方、年金制度の抜本改革を提唱しているのが、日本維新の会で、公的年金を積み立て方式に移行せよ、という主張をしている。確かにそうすれば、年金給付の減少や、支給開始年齢を繰り延べられてしまうリスクがなくなり、老後はある程度安心できる。問題は莫大な財源だ。非常に乱暴な推計だが、65歳支給開始を維持しながら、現在の1人当たり年金給付額を変更しないという前提で計算をすると、年金財政の赤字は急速に増えていき、2051年には22兆円となる。現在の税収は、所得税と消費税がそれぞれ20兆円、法人税が13兆円だから、この赤字を穴埋めするのは容易なことではない。また、年金を積み立て方式に移行するだけでは、国民年金の受給者を貧困から救えない。いまや働く人の4割が非正社員で、彼らの大部分が国民年金なのだから、彼らを待ち受ける老後の貧困対策は別途に考える必要がある。

 一方、社民党は現在の国民年金(基礎年金)に替わるものとして「基礎的暮らし年金」の創設を提言している。給付額は一律で月額8万円。財源は税金と企業負担で、国民には負担を求めないという。これだと老後はかなり安心できるが、必要な財源は、現時点の34兆円が増えていき、ピーク時の2042年に38兆円が必要になる。所得税の累進性強化や企業負担増で実現するのは困難だ。日本共産党はもう少し丁寧で、最低保障年金と現行年金を2階建て方式で組み合わせる。月5万円の最低保障額を設定し、その上に支払った保険料に応じた給付を上乗せする。国民年金で40年間、保険料を納めた人は、月8万3000円の年金を受給できるという。最低保障が月5万円だから、社民党案よりも財源は少なくて済む。それでもピーク時は24兆円の財源が必要になる。

 政党のなかで問題なのは、立憲民主党と国民民主党だ。両者とも、年金の最低保障を強化すると言いながら、抜本的改革に向けての制度設計を示していない。特に国会の決算委員会や党首討論で多くの時間を年金問題に費やした立憲民主党は、野党第一党として、年金制度を立て直すためのきちんとした青写真を国民に示す責任があると思う。

 いずれにしても野党は、最低保障年金の強化を提起しているのだから、財源の問題をしっかりと示すべき。私は、年金の抜本改革には、財政均衡の基準を基礎的財政収支均衡からインフレ率に切り替えるMMTが不可欠だと思う。MMT下では、インフレ率が一定基準に到達するまで財政赤字を拡大してよいから、いますぐ最低保障年金の導入が可能だ。

 ただ、党としてMMTの導入を表明している政治家は、山本太郎氏ただ1人だ。野党は、そこまで振り切らないと、与党に勝つことはできないだろう。

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