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『相棒season9』過去の事件やキャラと連動した最終回

 テレビドラマ『相棒season9』最終回「亡霊」が、3月9日に放送された。人気シリーズの最終回にふさわしく、過去の事件やキャラクターと連動する重厚なストーリーであった。
 最終回では死刑囚・本多篤人(古谷一行)の秘密裏の釈放にまつわる国家の陰謀に迫る。本多は数多くのテロ事件に関与した左翼過激派・赤いカナリア幹部で、その娘の早瀬茉莉(内山理名)と共にSeason8の第1話「カナリアの娘」に登場した。
 他にも瀬戸内米蔵・元法務大臣(津川雅彦)や片山雛子・衆議院議員(木村佳乃)が登場し、初代相棒である亀山薫(寺脇康文)の名前も言及された。さらに『劇場版II-警視庁占拠! 特命係の一番長い夜』で死亡した小野田公顕・警察庁官房室長(岸部一徳)も登場し、その思いが明かされる。

 単純に過去のエピソードやキャラクターと関係させるだけでなく、レギュラー陣の成長が見られる点が興味深い。「カナリアの娘」では杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)は相棒になり始めた当初であり、二人の関係はギスギスしていた。神戸の質問「今どちらにいらっしゃいます」に対し、右京が「言いたくありません。いちいち君に指図されるのは不愉快ですから」と答えるやり取りもあった。それが今回は右京が神戸に小野田官房室長の墓参りに誘っている。二人が文字通り相棒になったことを象徴する。

 根強いファンがいる割には活躍が少なくなっているトリオ・ザ・捜一も今回は上層部と対立するなど見せ場があった。但し、上層部の決定に納得のいかない伊丹憲一(川原和久)は独自に調査するものの、調べた情報を特命係に教えるだけで、「俺は死にたくないので」と自らは手を引く。保身に走るのは伊丹刑事らしくない。もし亀山が存在していたならば、亀山への対抗心から上記のような発言は絶対になかったであろう。一方で特命係と役割分担し、特命係を操縦するようになったと見ることも可能である。

 小野田官房室長の遺言とも言うべき思いは「私の目の黒いうちは、誰一人殺させません」であった。もともと小野田は外務省公邸人質監禁・篭城事件で強行突入を命じ、人質と警察官に死者を出してしまう。これが粘り強い交渉で解決を目指した右京との確執の原因であり、左遷部署「特命係」誕生の背景であった。人命よりも迅速な解決を目指して右京と対立した小野田が最終回は死者を出さないことを目指していた。劇場版では右京との価値観の相違が強調されていたが、ここでは右京と同じ立場になっている。

 その小野田の死亡は恐らく今後制作されるであろう『相棒season10』にとって、大きな損失である。最終回で小野田の仕事を引き継いだ片山議員がseason10での巨悪的存在になりそうである。しかし、片山議員は現時点では小野田のように愛憎半ばするキャラクターとは言えない。『相棒season10』が放送されるならば、小野田の代わりになるようなキャラクターが登場するかにも注目である。
(林田力)

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