176日ぶりのリングに鉄人が燃えた。この日は試合開始の5時間前に会場入り。リングが設営される前から誰もいない武道館でボルテージを高めた。「待っていたファンのみんなの前で恥かしい姿を見せたくなかった」という決意からだった。
小橋戦を自ら志願した井上雅央との第1試合。ゴング直後から手術した肘をかばうことなく、逆水平チョップを繰り出した。最初の1発、2発は交わされて空を切ったが、それが鉄人の闘志をかきたてた。逆水平から袈裟斬りチョップ。さらにはマシンガンチョップ54連発を相手の胸板に叩き込んだ。
終盤にはアルゼンチンバックブリーカ―で担ぎ上げられる場面もあったが、この窮地を不屈の闘志で耐え抜いて形勢逆転。ハーフネルソンスープレックスでぶん投げ、最後は剛腕ラリアートで14分7秒の熱闘を締めくくった。
昨年9月に右ひじ尺骨神経麻痺、同11月にボルト除去の再手術を受けたが、その不安を一切感じさせないチョップ合計103発の復活劇。「肘の違和感はなくなりました。やっぱりチョップは練習じゃなくてリングの上で打つものですね」
2006年6月の腎臓ガン発覚以降、初となるシングル戦だった。3年ぶりの勝利に「リングはいい。次のステップに進みたい」と復活に確かな手応えをつかんだ。